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2010-04-24 00:00
「哀れなハトヤマは、最大の敗者」との烙印
鍋嶋 敬三
評論家
普天間基地移設を巡る鳩山由紀夫政権の混乱ぶりは、日米同盟関係の将来に暗い影を落としている。米国の知日派は「日米関係がこれから数年間、より希薄になることを認識しなければならない」(アメリカン・エンタプライズ研究所のオースリン日本部長)と警鐘を鳴らしている。有識者が4月中旬、上院外交委の小委員会で証言した。日本が経済の弱さと政治的混乱によって「世界の舞台で決定的な行動を起こすことがますます難しくなっている」(オリエンタル・エコノミスト・リポートのカッツ編集部長)と漂流する日本の地位低下を厳しく採点した。民主党による政権交代を高く評価してきた米国の識者も、政策決定を巡る政権の混乱には懸念を深める一方のようだ。「5月末までに決着させる」と繰り返す鳩山首相は、その期限が切れた後の日米関係の姿をどのように描いているのだろうか?
ライシャワー駐日米大使の特別補佐官を務めたパッカード米日財団理事長は、ゲーツ国防長官が昨年10月に現行案通りの移設を日本に迫ったのは誤りで「鳩山首相に時間を与えるべきだった」との立場から、普天間問題を「日米関係の主要な決定要素にしてはならない」と主張する。(軍事)同盟は過去50年間、日米間で「非常に注意深く築き上げてきたパートナーシップの一部にすぎない」からだが、それにもかかわらず普天間問題によって「すべてが脱線することになれば、悲劇である」と問題の取り扱い方に不安を示している。3月の下院の公聴会では外交問題評議会シニア・フェローのスミス氏が「普天間問題をどう処理するかで、将来の日米関係の基調が決まる」と懸念を示した。
彼らの関心は、単に日米関係にとどまらない。アジア太平洋地域での米国の戦略的立場への影響という観点から、オースリン氏は日米同盟関係の本質的な変化が「予測できない結果」をもたらし、「不確実性と不安定」を引き起こす可能性を指摘した。鳩山政権は、沖縄本島のキャンプ・シュワブ陸上部や鹿児島県徳之島など複数の移設案を模索しているが、2006年に日米が合意した現行案のロードマップに比べて、暫定的なパッチワークにすぎない。それも移設候補地からは拒否され、現行案が最善とする米政府から相手にもされていない。核安全保障サミットに出席した鳩山首相はオバマ大統領との正式会談もかなわず、米紙コラムで「哀れなハトヤマは、最大の敗者」と烙印を押された。
鳩山政権が基地問題で近視眼的な問題意識しか持たないことが、根本の原因である。日米安全保障条約改定50周年の今年こそ、新たな同盟関係を再構築する好機であるにもかかわらず、この政権には日米の役割を含めた大きな戦略を構想しようとする気構えすら見えない。このままでは米国の核の傘を含む拡大抑止の信頼性も揺らぎかねない。日本政治の変化に注目するオースリン氏は、政権指導部のトップ(首相、幹事長)の交代もあり得ることや、二大政党化というよりも多党化へ動きつつあることを踏まえて、日本の政治は「次の5年以上、さらに流動化し、混乱するだろう」と予測した。「失われた10年」の再現を招くとすれば、鳩山首相の責任は重大である。
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