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2010-05-09 00:00
(連載)オバマ大統領の宥和外交路線への異議(1)
河村 洋
親米NGO代表
11月に中間選挙を控えている米国では、オバマ政権の過去1年間の外交の成果について、政策形成者たちの間で盛んな議論が行われている。大統領選挙からほどなくして、カーター政権の国家安全保障担当大統領補佐官であったズビグネフ・ブレジンスキー氏は、「新任のバラク・オバマ大統領の下で世界の中でのアメリカのイメージは改善するだろう」と述べたが、これはある意味では正しかった。前任者のジョージ・W・ブッシュ大統領の「アメリカの敵か味方か」というやり方に嫌悪感を抱いた者にとって、オバマ大統領は「長らく待望された救世主」と思われたからである。しかし、リベラル、左翼、あるいは本来なら反米であったような陣営の人達の人気が高いからというだけで、オバマ外交を称賛してはならない。
「外交政策イニシアチブ(FPI)」は、その“Foreign Policy 2010” と題する報告書で、オバマ政権下のアメリカ外交の実績に評価を下している。このレポートは、基本的政策アプローチ、対テロ戦争、中東、ロシア、中国、国防、そして人権といった広範囲の問題を分析しているが、冒頭で、オバマ政権の1年間の外交政策を総括して、「オバマ大統領のしたイラク駐留兵の撤退期限の延長とアフガニスタンへの追加派兵という決断は正しいが、オバマ大統領は、自らの外交政策をアメリカの衰退を必然と考える人たちに迎合させ、アメリカの軍事力(二つの戦争を同時に行なう能力)、自由民主主義諸国との同盟、そしてアメリカの理念の普及を軽視している」と述べている。
中東に関しては、オバマ大統領は、この地域でのアメリカの役割に関する見方を急激に変える姿勢を見せた。オバマ大統領は、1953年にイランのモサデグ首相を政権の座から引きずり降ろしたクーデターへの謝罪を述べたばかりか、昨年6月の民主化運動にもかかわらず、イランの現体制を尊重するとまで言い放った。FPIのロバート・ケーガン所長は「イランは、オバマ大統領のメッセージを『アメリカは、自由を求めるイラン国民を支持しない』という意味だと理解してしまう」と批判している。
中東だけが問題ではない。ケーガン氏は同じ論文で「ロシアや中国との対話路線は、NATO諸国、日本、オーストラリア、韓国、フィリピン、インドとの同盟関係の比重を低下させてしまう」と辛辣に論評している。昨年11月にオバマ氏が中国を訪問した際には、人権問題を取り上げなかった。“Nuclear Showdown: North Korea Takes on the World”の著者であるゴードン・G・チャン氏は「北京の冷徹で実利本位の指導者達は、我々が人権問題で強く出なかったことは弱さの象徴だと受け止めている。我々が弱いと思われてしまえば、彼らが協調する理由はなくなる。よって、人権の普及はアメリカの安全保障につながる」と述べている。ロシアに関して『ワシントン・ポスト』紙のチャールズ・クローサマー論説員は「旧ソ連及び東ヨーロッパ諸国でのオバマ氏の宥和政策は、クレムリンがこの地域を正当な『勢力範囲』であると信じている現状では、非生産的だ」と主張する(つづく)
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