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2010-05-10 00:00
(連載)オバマ大統領の宥和外交路線への異議(2)
河村 洋
親米NGO代表
“Foreign Policy 2010”の冒頭に掲載された論文に記されているように、アメリカが弱いと見られてしまえば、世界各地での宗教的狂信主義と権威主義は勢いを増すであろう。オバマ大統領を今世紀のジミー・カーターと見なす意見がかなり強いことは、何ら不思議ではない。昨年4月8日付け『ウォールストリート・ジャーナル』紙への寄稿のなかで、アメリカン・エンタープライズ研究所のトマス・ドネリー常任フェローとゲーリー・シュミット常任研究員が「F22ラプター戦闘機、海軍力、宇宙・ミサイル防衛計画の急激な縮小によって、制空、制海、科学技術でのアメリカの優位が揺らいでしまう」と深刻な懸念を述べていたのも、当然のことである。
2月15日付けのプリンストン大学の『学生新聞』で、クリスティナ・レンフォ氏が「その結果として、国際社会の中に失望する者が出てくるとしても、オバマ大統領は、自分の人気の維持を究極の目的とすることをやめて、果断な決断を下すべきである」というのは、正しい。恐るべき多くの国際市民がオバマ大統領の提唱するチャーミングな白昼夢にとり憑かれているが、ジョン・ボルトン元国連大使は2月8日付け『ウィークリー・スタンダード』紙への寄稿論文のなかで「冷戦期から冷戦終結期にかけてアメリカの安全を守ってきたオーソドックスな戦略思考に敬意を払わない」と言って、オバマ大統領を非難している。
オバマ大統領は「ロシアとの新STARTは、核なき世界に向けた大きな一歩だ」と高らかに主張するが、米露が核削減を行なってもイランと北朝鮮が核計画を廃止する動機付けにはなっていない。ボルトン氏はさらに「ロシアの経済事情からすれば、最終的にはクレムリンはアメリカとの核均衡を追及できなくなるので、戦略兵器協定は不必要で、拙速だった」と主張している。また、ボルトン氏は「ロシアがアメリカのように『世界の警察官』の役割を担っていないことが問題だ」と指摘している。ジョン・ボルトン氏は「大統領は(一般教書)演説で国家安全保障に関して何も述べなかった方が良かったのではないか」と厳しい文言で、この論文を締め括っている。ボルトン氏がオバマ大統領を「ミスター・ナイスガイ」とまで皮肉を込めて呼ぶのは、当然である。オバマ大統領がプラハとカイロで行なった演説は、ナイーブな国際市民には非常に心地よく響くが、中味は全くない。
何と言っても、バラク・オバマ氏が就任するまでのどの大統領も、大統領候補も、アメリカ衰退論がもたらす結末に何の考慮も払わずに、そうした議論を躊躇なく受け入れる者はいなかった。日高義樹氏が自らの著書『不幸を選択したアメリカ』で述べている通り、オバマ大統領はアメリカの価値観に自信を持てないのかも知れない。オバマ大統領の宥和外交路線は、より批判的な観点から検証される必要がある。(おわり)
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