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2010-06-11 00:00
新内閣に、円安政策を望む
塚崎 公義
大学教授
新内閣が誕生した。新内閣に期待したい事項は多いが、中でも円安政策を重要と考える。「通貨切り下げ競争は許されない」といった建前論が聞こえてきそうだが、切り下げ競争を目指しているのではない。リーマン・ショックの最大の被害者である日本が、当然の権利として、「原状の一部回復」を要求する、という事である。リーマン・ショックにより、日本の輸出産業は甚大な被害を被った。第一に、米国等の景気が悪化し、需要が激減した。第二に、円がドルに対して高くなり、輸出企業の手取りが減少した。第三に、円が高くなり、日本製品の競争力が低下した。競争力に関しては、対ドルレートも重要だが、日本製品と競合している欧州や韓国の通貨に対して円が大幅高となっている事が手痛い打撃となっている事を忘れてはならない。
最近になって、ようやく国内景気が回復してきたと思ったら、ユーロが大幅に安くなっており、輸出企業に冷や水を浴びせている。株価も海外要因で再び下げている。まさに、日本経済は「サンドバック状態」である。日本経済が輸出依存である事は疑いのない所である。中長期的には、内需主導型に改めていくべき等々の議論があろうが、今次不況をいきなり内需だけで乗り切ろうとするのは非現実的である。そうした中で、輸出を回復させる最も簡単な方法は、為替を円安に誘導することである。為替が円安になれば、副次的な効果として消費者物価の下落も止まり、「デフレ」からの脱却も可能となろう。
幸い、菅総理は、市場から円安論者だと思われている。それを利用して、口先介入を繰り返してはどうか。口先介入で円安が実現出来るなら、何よりも安上がりの景気対策であろう。景気が回復すれば、税収も上がり、財政赤字も縮小するので、一石何鳥にもなる「政策」である。場合によっては、実際に介入しても良いであろう。「介入してドルを買って、その後に円高になったら損をする」と懸念する人もいるが、心配する必要はない。30年後には日本の高齢化が進み、日本が貿易赤字に陥り、円が今より安くなっているであろうから、今買ったドルを持っているだけで、立派な財産になっているはずである。
景気対策という観点から為替介入を公共投資と比べると、望ましい事が二つある。一つは、橋や道路を造っても、30年後には老朽化する可能性があるが、為替の介入は、子孫に財産を残すのである。いま一つは、非効率的な建設会社を延命させるのではなく、日本の誇る輸出産業を発展させる効果を持つという事である。その意味では日本経済の生産性を向上させる事にもなるのである。財政再建、景気対策、成長戦略という、一見すると相互に矛盾しそうな目標を同時に達成することが求められている新政権にとって、まさに円安政策が起死回生の一手となるであろう。
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