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2010-06-18 00:00
菅政権ウイングを右へと拡大
杉浦 正章
政治評論家
ウイングの右への拡大を「ここまでやるか」と思えたのが首相・菅直人の消費税発言だ。なんと自民党の打ち出している「10%」に乗ったのだ。外交・安保の主要テーマでも同時に発表したマニフェストで自民党との差がほとんど見えなくなっている。明らかに現実政治への転換を目指す菅の意向の反映である。これに対して自民党は、左ウイングへの拡大どころか、右端に縮こまった「本格保守」と称する保守回帰で選挙をやろうとしている。これでは票は伸びない。菅は憶面もなく自民党案に乗ったというべきだろう。消費税増税で菅は「財政健全化検討会議」構想を打ち出し、前向き姿勢をみせていた。しかし日本経団連会長・米倉弘昌(住友化学会長)などからは「なかなか何%と選挙前に言えないところもあるが、方向性だけでも掲げるべきだ」と注文をつけられていた。ところが、菅は、そのまま10%に乗ってしまったのだ。
「自民党が提案している10%を一つの参考にさせていただく」と述べたのだ。自民党総裁・谷垣禎一が「だんだん我々の政策にすり寄ってきた」と、“薄気味悪さ”を強調するのも無理はない。政調会長・石破茂に言わせると、「抱きつきお化け」だそうだ。すでに筆者は、就任記者会見のときから、菅の右ウイングへの“蚕食”を指摘、「自民党と変わらない」としてきたが、これでは第2自民党と言ってもよいほどである。菅の本会議答弁を聞いても、路線転換は明白だ。これを象徴するのが、かつて国旗・国歌法案に反対したはずなのに、「今は国旗に敬意を示し、国歌斉唱の折には斉唱している」と臆(おく)することもない。靖国参拝は、在任中の参拝は否定しながらも「これまで個人的には何度も参拝した」とわざわざ付け加えている。
外交・安保についても、菅の発表したマニフェストでは、衆院選で公約した「米軍再編や在日米軍基地のあり方は見直しの方向で臨む」との記述を削除した。その上で「日米同盟を深化させる」と日米安保体制維持を前面に打ち出した。焦点の普天間移設に関しても「日米合意に基づいて沖縄の負担軽減に全力を尽くす」として、名護市辺野古への移設を確認した。菅はもともと“信念左翼”ではないと言われてきたが、首相就任後の現実路線への転換はすさまじいほどである。この柔軟姿勢は、「消費税増税は選挙にならない」とする小沢一郎サイドや党内左派を今後刺激していくことは確かだが、選挙を目前にして「あれよ、あれよ」という間の右傾化に、反対の声も上げるわけにもいかないのが実情だろう。
一方これに対抗するためには、自民党は路線上は中曽根政権の時のように左にウイングを広げなければならないときであろう。しかし、大勢は“保守回帰”である。総選挙の前後から民主党のインド洋における自衛隊の給油活動からの撤退などに反発して、右バネが働き、そのままとなっている。しかし、今時仏壇からほこりをはたいて「本格保守だ」と出してきても、国民、とりわけ浮動層に訴える力はないに等しいだろう。相手の民主党は、その保守にまで入り込んできているのだ。民主党との大きな違いである憲法改正を自民党が際立たせても、浮動票は逃げる一方だろう。菅に対抗するためには、左にかじを切らなければならないが、その大局判断ができる政治家が、執行部にはどうもいないようだ。
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