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2010-06-23 00:00
菅、谷垣は、財政再建のための「パーシャル連合」を目指せ
杉浦 正章
政治評論家
9党党首討論での首相・菅直人の発言を、参院選後への「秋波」と受け取ったのは、新党改革代表・舛添要一と国民新党代表・亀井静香だろう。舛添はそわそわしていた。自民党にも、政策ごとの「パーシャル連合」が投げかかられた感が濃厚だが、揚げ足取りで精一杯の総裁・谷垣禎一は気づかなかった。菅の発言を聞くと、単独過半数は無理との前提に立っているようにも聞こえ、政権党として“ねじれ”防止への布石を打ち始めた様相だ。党首討論で菅は、「物事を進めるためには、衆院で法案が通っても、参院ですべて否決されれば、一般的には政権運営できないので、そこはいろんな形で、いろんな人たちと話をするということは、当然そうなった場合にはやらなければいけないだろうと思っている」と、過半数割れの場合の連立に言及した。
民主党が60議席の単独過半数に達しなければ、連立だが、連立を組む民主党と国民新党が参院で過半数(非改選を含め122議席)を維持するには、両党の合計で56議席以上が必要となる。菅が「いろいろな人」とあえて言ったのは、国民新との連立では足りないケースも想定していると言うことだ。党首討論では、公明、共産、社民の各党党首が明確に連立を否定。みんなの党代表の渡辺喜美も「キャスチング・ボートを握れば、民主党のばらまきをすべて蹴飛ばす」というのだから、まず応じまい。総選挙での決戦をにらんで、現在の独自路線維持だろう。たちあがれ日本代表の平沼赳夫が消費税での超党派協議に前向き姿勢を見せたが、いくら何でも最右翼政党との連携はあるまい。与謝野・小沢ラインが動けば別だ。国民新は連立継続拒否の理由はない。
問題は舛添要一。舛添は、既に菅が代表になった“瞬間”に、「小沢一郎氏の影響力がそがれるなら、民主党の良識ある人と一緒にやることはやぶさかでない」と、“誘い水”を送っている。新党改革幹部には、小沢とたもとを分かった民主党離党組がいるが、舛添にはその意向は眼中にないように見える。問題は、舛添が自らの人事がらみで連立に前向き姿勢を取っても、民主党側が舛添を必要とするかだ。大勢は「目立ちたがり屋」の入閣は煙ったいだろうと見るが、人数が足りない場合には是非もない。菅発言は、もう一つ、パーシャル連合の「秋波」を送っていることを見逃してはならない。菅は、かつて小沢と福田による大連立に反対した経緯を、「あのとき自民党と民主党が連立を組んでいると、たぶん衆院でも参院でも90%を超える議席が与党になるだろう。果たしてそれで国会というものが機能するんだろうかと思ったからだ」と説明。加えて「逆に、これとこれは、その政権では取り組まないから、その範囲の中で大連立とか、そういう何かがないと、議会制そのものが機能しなくなる」と、政策ごとのパーシャル連合の可能性については、前向きな考えであることを示唆した。
これに対して、谷垣は、「民主党とは組まないぞの決意」と、まるで先が読めていない発言に終始した。消費税という国の命運を左右する大問題で、民主党政権が自党と同じ政策を掲げたらどうなるかの意味が分かっていない。大政党を率いるものとしての度量があれば、こういう場合には、将来の布石としても、部分連合には含みを持たせるべき時だ。その点政調会長・石破茂は民放番組で「軽々な形での連立は組まない。しかし政策ごとに一つ一つの問題で賛否を決めてゆくのはよい」と柔軟姿勢だ。自民党が連立を前提に選挙をすることは不可能だろうが、大局を見るならば、選挙後は「財政再建部分連合」くらいは視野に入れるべきだ。小沢も幹事長在任中に亀井と大敗した場合の対応について、「いざとなったらパーシャル連合を組めばいい」との点で一致しており、選挙後動きを開始する可能性は否定できまい。
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