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2010-06-24 00:00
朝鮮半島の異変に備えはあるか
鍋嶋 敬三
評論家
6月25日は朝鮮戦争勃発60周年に当たる。38度線を越えて韓国に侵入した北朝鮮軍は3ヶ月足らずで半島南部の慶州、釜山近くまで占領した。3月下旬の北朝鮮による韓国哨戒艦の沈没事件は一昔前なら戦争になっていた。韓国が国連安全保障理事会に提起して以来3週間、常任理事国の中国とロシアが制裁に反対して膠着状態に陥っている。国際社会が北朝鮮の挑発行為を見逃せば、北朝鮮の瀬戸際戦術にお墨付きを与えることになる。菅直人首相は今月下旬にカナダで開かれるG20サミットを利用して中ロの説得に強い姿勢で当たるべきである。北朝鮮は韓国側の報告を「完全なねつ造」と非難し、安保理が非難の文書を採択した場合は報復の軍事行動を取ると警告した。日本政府には将来起こりうる朝鮮半島の異変への備えは十分にあるだろうか。
北朝鮮の攻撃は鳩山由紀夫政権が沖縄の普天間海兵隊飛行場移設問題の処理を誤り、日米同盟関係が緊張状態に陥ったのを見透かすように起きた。韓国の防衛は在韓米軍だけが担っているわけではない。沖縄を含む在日米軍がアジア太平洋地域の安全維持に大きくかかわっている。周辺事態安全確保法は朝鮮半島有事を想定して米軍の活動に対する日本の後方支援を定めている。日本側の安保協力が円滑になされなければ効果的に対処できない。半島の危機は日本の安全保障の危機だという明確な認識を政府も国民も持つ必要がある。
北朝鮮の金正日政権は体制維持のため核兵器、ミサイルの開発を進めてきた。しかし、2008年脳卒中で倒れた金総書記の健康不安を抱え、後継体制への準備を本格化させている。しかし、昨年秋のデノミネーション(通貨呼称単位の変更)による物価高騰など経済混乱で国民の不満が高まり、政権は締め付けに必死である。韓国艦攻撃事件を起こした狙いは不明だ。在韓米軍のシャープ司令官は3月の米議会証言で政権の意思決定における軍部の役割拡大を指摘した。金総書記の指示がなければこのような事件は起きないとされるが、体制内の軍部の影響力が強まりつつあることをうかがわせる証言である。
そうだとすれば、北朝鮮が今後とも軍事的強硬策に出ることは十分考えられる。北朝鮮の核廃棄を目指す6カ国協議は再開のめどが立っていない。2005年に北朝鮮の核放棄を盛り込んだ共同声明採択にこぎつけたが、核放棄の検証を巡って2008年に決裂、北朝鮮は2009年4月には協議から離脱宣言、同年5月には2回目の核実験を強行、安保理による制裁決議を受けた。軍事的挑発を繰り返す北朝鮮をつけ上がらせないためには国際社会による厳しい措置が必要である。
東アジアの不安定要因は朝鮮半島だけではない。米国による制海権、制空権を制約しようとする中国の急速な軍事力拡大が続いている。東アジアの地域的安定には日米同盟が核になる。アメリカン・エンタプライズ研究所のオースリン日本部長は日本との同盟関係をより地域志向的な視点からアプローチしなければならないと指摘している。普天間問題の日米合意に基づいて代替施設の具体的工法や位置を8月末までに決定する約束だ。その前に菅首相は在日米軍基地がアジア太平洋地域の安定に果たしている役割を国民に十分説明し理解を求めることが不可欠である。
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