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2010-06-28 00:00
民主失速で過半数維持は微妙な見通し
杉浦 正章
政治評論家
全国紙の世論調査で出て来た参院選序盤の共通項は、与党の過半数維持が困難視される情勢だ。自民党の復調に加えて、みんなの党の躍進が潮流となりつつあるからだ。この結果、民主党政権は「新連立」を目指さざるを得ない状況だが、小政党も苦戦で、数合わせが困難な事態も予想され、幹事長・枝野幸男はまとまった議席の取れそうなみんなの党に擦り寄ろうとしている。みんなが拒否すれば、ねじれ状態もあり得る事態になりかねない。民主が失速とも言える情勢の原因は、消費税に焦点が絞られたことと複数区2人擁立など小沢の選挙戦略が事実上失敗していることだ。世論調査は、朝日、読売、共同が信用できるとみた。日経だけが「民主54上回る勢い 」と民主に甘いが、記事内容を分析しても、いまひとつ鋭さに欠ける。
民主に「勢い」がなく、V字回復が失速状態なのが序盤戦の特色で、方向性がずれている。毎日は、何と初めて全面的に共同依存型となった。朝日は、見出しが「民主過半数微妙」で、「民54,自41,みんな10、公8」。読売は、「与党過半数は微妙」で、「民50にとどまる。自50に迫る」。共同は、「与党過半数は微妙」で、「民52,自46,公9、みんな7」と推定した。朝日は「民主過半数微妙」としたが、数字から予測すれば、事実上「与党過半数微妙」の見出しでもおかしくない。まず、56議席必要な与党過半数だが、各紙共通で「国民新を入れても届かず、新連立が必要となる」との数字だ。その場合、国民新が「当選0」になりそうであることや、総議席数が「6から2議席に落ち込みそう」な新党改革や、「3議席程度」のたちあがれ日本などとの連立でしのぐか、それで数が足りるのかなどが、すぐ問題となる。
新連立ができなければ、公明、みんなに触手を伸ばすか、ねじれのまま政策ごとの「パーシャル連合」でいくのか、などの選択を迫られることになろう。こうした中で枝野は、6月27日みんなとの連携について「行政改革や公務員制度改革について、かなりの部分が一致している。政策的判断としては、一緒にやっていただけると思う」と早くも露骨に擦り寄った。筆者が「台風の眼で、少なくとも10議席」と指摘したみんなは、「朝日10、読売躍進、共同7」と一躍ゼロから当選議席数第3位になりそうな気配だ。みんなは比例区での「朝日5、共同6」の予測を基盤に、3人区で混戦模様を形作っている。この勢いから見ると、3人区でかなり食い込み、主に公明の議席に影響を及ぼしそうだ。みんなが躍進した場合、代表・渡辺喜美は「大義なき野合はしない。民主党の悪法を皆つぶす」と断言しており、当面ねじれ実現を目指すものとみられる。
もっとも、「大義」があれば連立が可能となるが、その場合民主党は国民新党を切って郵政完全民営化を主張するみんなに同調しなければならないが、至難の業だろう。みんなは選挙後も台風の眼となりそうだ。公明もすぐには連立参加を表明することは難しいだろう。公明に対する「小沢工作」は既に始まっているかも知れない。民主不振の原因には、消費税問題もさることながら、小沢の選挙戦略の不調がある。小沢の選挙戦略はすべて「止せばいいのにやった」ことが裏目に出ている。追い風時の選挙戦略を、ばかの一つ覚えよろしく、防戦時に適用してしまったことだ。まずは8人も立てた小沢ガールズなるものの動向だが、朝日は「女性の新顔で、無党派層から一定の支持を受けているのは、北海道だけ。2匹目のドジョウとはいきそうにない」と分析している。有権者はもう“小沢臭”のするものは拒絶反応の様相だ。2人区での2人擁立も裏目だ。「独占の可能性があるのは宮城だけ」(朝日)という。
2人擁立が「掘り起こし効果」で比例区などに影響をもたらすかについて、読売は、「つながっているとの見方がある」としているが、朝日は、調査を分析して、否定している。2人区全体での民主党支持率30%、全体の支持率も30%と変わらないのだという。これは朝日の分析の方が説得力がある。小沢は「地方経済は、都会以上に非常に深刻だ。そこで、消費税10%という話になると非常に心配している」と菅をけん制した。過半数割れのの場合、原因を首相・菅直人の消費税発言にあるとしたいのだろうが、目糞鼻屎を笑うのたぐいだろう。こうした状況から、菅は選挙の結果を待たずに、「新連立」構想を練らなければならない立場に置かれたと言えよう。トロント市内のホテルで菅は、サミット同行記者団に「他党ともいろんな形で話し合いをすることが必要になるだろう」と述べて、「新連立」か、それが不可能な場合は、パーシャル連合を目指さざるを得ないことを認めた。
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