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2010-07-01 00:00
菅、消費税で究極の「抱きつき」作戦
杉浦正章
政治評論家
消費税論議は「毒を食らわば皿まで」と指摘したが、首相・菅直人がついにその“皿”にかじりついた。街頭演説でいったん揺らいだ方向を再転換、逆進性緩和の導入方針まで言及、「消費税は政局化する」というタブーに挑戦した形となった。選挙に不利を承知で、橋を焼落として退路を断った形だ。菅の武器は、逆進性緩和による低所得者の負担軽減と自民党に対する“究極の抱きつき作戦”だ。これで参院選をしのげれば、長期政権の資格を獲得することになるが、しのげなければ「政局」だ。
カナダで、「公約は自民党への超党派協議の提示まで」と「10%公約」を撤回しかねないところまでぶれた菅だが、6月29日側近らとの打ち合わせで、「ぶれは消費税貫徹よりまずい」ことで一致、あえて訴えてゆくことを確認。30日の街頭演説では、正直に「『消費税を言うなら、選挙が終わってからがいい』と言う人がいる。私は『しないで済むなら』とも思ったが、選挙が終わって『いや、実は』と言ったら、やはりおかしい」と既定路線に戻った。
しかし、「消費税を打ち上げただけでは、票が減る一方」と判断したのか、低所得者への配慮を併せて打ち出す演説となった。ところが年収の範囲が何と三転して、構想が付け焼き刃であることを露呈してしまった。最初に「200万から300万」、次ぎに「300万から350万」、その次ぎに「300万から400万」を負担軽減策の基準として発言した。これは練りに練った構想でなく、明らかに「選挙向けの思いつき」的な発言であることを、いみじくも物語る結果となった。加えて菅は、自民党への「抱きつきお化け」作戦も忘れずに、「自民党が10%の消費税をマニフェストに書かれた勇気をたたえたい」「10%くらいは検討しましょう、と自民党が最初に提案した。それを参考にして、大いに議論していこうじゃないか」などと、あちこちで発言した。
一連の発言から見た菅の消費税戦略は、(1)ぶれの印象を与える発言撤回はしない、(2)逆進性緩和で低所得者向け対策を訴える、(3)自民党の10%増税に完全に乗って、抱きつき作戦を展開する、というところにあることが見えてきた。これに対して、自民党総裁・谷垣禎一は「自民党の消費税は、民主党の消費税とは根本が違う。民主党はばらまきのための増税」と違いを強調しようとする。しかし、この発想には無理がある。消費者にとって良い消費税と悪い消費税はない。皆悪い消費税なのだ。むしろ菅のように逆進性緩和を強調して、必要を訴えた方が説得力がある。一方で、選挙後に向けて牙を研いでいる小沢一郎も、30日「民主党の公約は消費税を4年間上げないこと。約束は実行しないと駄目だ」と菅の方針を真っ向から否定。「消費増税民主」と「非消費増税民主」にくっきり分かれた双頭選挙が展開されている。
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