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2010-07-09 00:00
「連立」拒否のみんなの党の狙いは政界再編か
杉浦正章
政治評論家
みんなの党代表・渡辺喜美の発言を分析すると、選挙後に民主党が新連立政権に取り込むことは、至難の業のように見える。たしかに渡辺が繰り返し強調するように、「アジェンダ(行動計画・政策目標)が違う」のである。むしろ渡辺は、参院10議席確保を土台に、衆参のねじれをフルに活用して、民主党政権を痛めつけ、分裂を誘って、衆院選に向けて政界再編の主導権を握ろうとしているかのようである。各社の終盤情勢調査によると、民主党は過半数割れどころか、40議席台になる可能性が生じている。朝日新聞と共同通信の調査傾向に顕著に表れている。読売、日経は「50議席前後」としている。この数字が意味するものは、与党が過半数を維持するには、連立対象が国民新党だけでは足りず、他のミニ政党を足しても足りない可能性があることだ。
たとえ無所属などもかき集めて政権を維持しても、社民党離脱の例に見られるように、ミニ政党が政権を揺さぶる事態になりかねない。安定した政権にするには公明党や、10議席台を確保しそうなみんなの党を連立に引き込むことが、重要ポイントとなる。首相・菅直人が「小政党は目立っただけじゃ駄目だ。他党と手を握って、仲良くしなきゃいけない」と述べ、幹事長・枝野幸男とともにみんなの党に秋波を送り出したのも、過半数割れ後のねじれをどうしても防ぎ、政権の安定を確保したいという一点にある。しかし渡辺の発言を聞いていると、「アジェンダが違う」「路線が180度違う」ことを挙げ、「連立は組みようがない」の繰り返しであり、民主党にとって取り付く島のない状態だ。
たしかに渡辺の指摘する「民主党は大きな政府で、官僚主導の増税路線。みんなの党は小さな政府で、民間と地域が主役の成長路線」では、政策理念の根本が異なる。それでは、みんなの党の狙いはどこにあるのだろうか。渡辺は「わが党が『この指とまれ』の政界再編をやってゆく」と強調する。そのためには、参院10議席獲得は大きな意味を持つ。まず10議席あれば政党の法案提出要件を満たし、政党としての存在感は公明党と並ぶ。加えて参院でのキャスティングボートを握り、民主党政権を窮地に追い込むことが可能だ。渡辺は「民主党の悪法を片っ端からつぶす」とも述べている。しかし現政権の法案をつぶすだけでは、単なる反対政党の域を出ない。政権を揺さぶることにより、「民主党がばらけ、自民党もばらける。その状況を作り出す」(渡辺)のが目的だ。
政界再編の核になろうというのである。渡辺は「最終的には次の総選挙」とも述べている。この発言で見えてくる長期戦略は、民主党政権に対峙(たいじ)して、早期解散に持ち込み、衆院でも過半数割れに追い込み、みんなの党を中核とする政界再編を達成しようという構想だ。ただ、問題は総選挙までみんなの党のブームが続くかどうかだ。渡辺の唱える政策も、「節約で30兆ひねり出す」に始まって、「4%以上の名目経済成長率を達成すれば、消費税を増税しないで済む」に至るまで、だれが見ても実現性に乏しい内容だ。今回の有権者の選択は、民主党には失望したが、自民党に戻るのは嫌だとするムードを反映したものであり、いわば「次善の策」の選択であろう。みんなの党の政策の是非を真剣に検討した結果ではあるまい。
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