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2010-07-14 00:00
菅政権は、続投しても「準死に体政権」
杉浦 正章
政治評論家
権力闘争はさておいて、政策面でも野党にことごとく主導権を握られるであろう政権をどう呼ぶか。1丁目1番地の政策はすべて実現せず、政権としての存在が薄れたのだから、「死に体政権」か。それでは成りたての首相・菅直人にあまりにも可哀想だとすれば、「準死に体政権」だろう。戦後の歴代首相でもまれに見る厳しい状況に置かれ、続投の方向が強いものの、菅はまだなすすべを知らない。参院過半数割れという事態のなかで、民主党政権の政策を改めて精査すれば、すべての重要政策が、パソコン用語で「ゴミ箱」へだ。ゴミ箱どころか、パソコン本体のリセットを求められている。菅の目指す部分連合とは、菅が1998年の「金融国会」で時の首相・小渕恵三に対して行った「金融再生法案の野党案丸のみ」を、再現させられることに他ならない。因果応報とはこのことだ。
まず、重要施策がすべて行き詰まる。衆院優位の予算案、条約案以外は、予算関連法案も含めて、野党主導となる。したがって自民、みんなが反対する郵政改革法案の臨時国会での処理は絶望的だ。総務相・原口一博は「野党の意見も十分採り入れながら、法案の作成をしなければならない」と述べるが、預入限度額の引き下げ程度で野党が応じると思ったら甘い。亀井静香主導の「準国有化」路線の根底を元に戻さざるを得ないだろう。影響力がほとんどなくなった亀井の後ろ盾を失った日本郵政への「天下り」社長・斎藤次郎への風当たりも、強まる一方だろう。ちょっとしたミスが人事へと結びつく。子ども手当、高速料金見直し、農家への個別補償などのいわゆる「ばらまき政策」も挫折した。子ども手当は既に支給してしまった1万3千円を撤回することは困難だろうが、今後実施する「現物支給」部分などは根本から見直しを迫られるだろう。
高速料金も、新制度に野党は反対だ。農家への個別所得補償も本格実施は不可能だろう。民主党がみんなの党の抱き込みで秋波を送って、連携のポイントとなっている「公務員制度改革」も極めて難しい。労組を基盤とする政権だけに、国家公務員、地方公務員の人件費2割カットは実現させられまい。そして焦点の財政再建のための消費税増税路線は、先送りで冷却期間をおかざるを得なくなった。次の総選挙を意識した場合、たとえ菅が在任中であっても、単独での突出は難しい。マスコミは今朝の読売新聞の社説のように「ひるまず消費税論議を進めよ」と消費増税に前向きだ。しかし菅は「これがひるまずにいられようか」と、同社説を読んで思っているに違いない。社説に乗って選挙大敗の失敗をしたのである。この「準死に体政権」の状況は、自民党との大連立や公明、みんな両党との「新連立」で解消するしか手段はない。
しかし、衆院選をにらんで民主党政権つぶしにかかる野党は、安易な連立に乗るまい。当面の焦点は亀井静香の社民党などとの統一会派により、衆議院で3分の2回復を狙う動きが奏功するかどうかだ。菅は、代表選挙を前倒しして、9月5日にも実施する方針のようだ。小沢が黙って見過ごすか、候補を立てるかは、幹事長人事と絡んでおり、未知数だ。小沢が候補を立てた場合、血で血を洗う戦いになるが、党大会は8年ぶりに「党員・サポーター投票」が行われる。一見党員・サポーターに人脈がある小沢に有利に見えるが、検察審議会の動向や「政治とカネ」が作用して、党員・サポーターが小沢サイドを押すかどうか疑わしい。やはり菅が有利で再選の流れだろう。問題はその後の秋の臨時国会に「死に体政権」で耐えられるかどうかだろう。再選されても、菅にとってまさに地獄の1丁目の状況が続く。
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