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2010-07-15 00:00
(連載)アメリカ最大の聖域:最高裁判所の実態(3)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
戦後も、朝鮮戦争の最中の1952年に全米鉄鋼労組がストライキを計画したため、戦争遂行に支障が出ると判断したトルーマン大統領は大統領令を出し、製鉄会社を管理下に置こうとした。だが、最高裁は6対3で大統領令は連邦政府の権限を越えるものであると違憲判決を下し、大統領は指令の撤回を余儀なくされた。また、1985年にグラム・ラドマン・ホリングス法(均衡財政・緊急赤字管理法)が成立したが、最高裁は違憲との判断を下したため、法律は無効となった。そのため議会は違憲部分を修正して、1987年に再び同法を成立させている。
最近でも最高裁の判決が政府に大きな影響を与えた例がある。ブッシュ前大統領はテロリスト容疑者をキューバのガンタナモ基地に収容し、拷問を加えるなど不当な扱いをしていた。この問題はハムダン対ラムズフェルド裁判で審議され、2006年に最高裁は5対3でブッシュ大統領が設置した軍事調査委員会は違憲であるとの判決を下したのである。この結果、ブッシュ政権はイラク政策の修正を迫られることになった。違憲の理由は、大統領は議会の承認を得て軍事調査委員会を設置することができるが、議会はその権限を大統領に付与することを拒否しているというものであった。
オバマ大統領も同様な問題に直面している。オバマ大統領は民主党の念願でもあった国民皆保険制度を実現したが、現在12州の司法長官が医療保険制度改革法は違憲であると訴訟を起こしている。その根拠は、同法では2014年までに国民全員に保険制度への加入を義務づけ、また企業にも従業員への健康保険提供を義務付けて、加入しない場合、罰金を課せられることになっているが、こうした強制加盟は憲法が保証する国民の「選択権」を侵害するものであるという主張である。4月段階では既に4州が同法の実施を阻止する法案を可決している。こうした動きに対して、ホワイトハウスのデビッド・アクセルロッド上級顧問は「同法は法的な挑戦に耐えることができる」と楽観的な見通しを語っている。
医療保険制度改革は国民の支持を得ていない。4月19日に発表された世論調査会社ラスムーセンの調査では、国民の56%が同法の撤廃を支持している。共和党は11月の中間選挙を同法のリフレンダム(国民投票)と位置づけ、攻勢を強めている。中間選挙では与党民主党の後退は避けられない状況になっており、オバマ政権は医療保険制度改革法の違憲裁判と中間選挙という二つの挑戦に直面している。支持率が低迷するオバマ大統領にとって厳しい状況は続きそうだ。(おわり)
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