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2010-07-31 00:00
(連載)日印核協定は日本外交の歴史的転換か?(2)
河村 洋
親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
日本がインドの民間原子力計画に関与しようとしている理由は、市場開拓だけではない。現在、インドの電力生産の50%は石炭でまかなわれているので、温室効果ガスの排出削減は至上命題である。 ともかく、中道左派の菅政権がインドに関しては右旋回した。大阪経済法科大学の吉田康彦教授は「日本はNPTにとらわれるべきではなく、拡大東アジア共同体の建設のためにもインドとの関係を深化させるべきだ」と主張する。また、吉田氏はパキスタンがカーン・ネットワークを通じて核拡散を行なったのに対し、インドは核兵器を拡散していないと指摘する。
しかし、日本の世論は吉田氏ほどインドに寛大ではない。「地球市民集会ナガサキ」という反核NGOは、インドが国際核不拡散体制に加盟していないという事情から岡田外相に抗議の書簡を送った。リベラルな朝日新聞も、保守の読売新聞も、「ダブル・スタンダードによってパキスタン、イラン、北朝鮮が自分達の核保有を正当化する」と懸念している。日印両国間の交渉が始まったのは、昨年12月29日の鳩山由紀夫首相(当時)とマンモハン・シン首相との会談以来である。鳩山氏は民間用の原子力協力の開始に積極的ではなかったが、両国の外務次官と国防次官による2+2交渉によって核協定は進められていった。核協定の締結は、11月ないし12月に予定されているシン首相の東京訪問の時期で、テロおよび海賊対策といった他の問題についての協定も結ばれる。
インドは重要な戦略的パートナーであり、有望な市場、英語圏最大の民主国家でもあるので、私は協定の締結自体には反対しない。また、インドは中国への牽制になり得る国でもある。問題は、核協定によって南アジアのパワー・ゲームに拍車がかかることである。「核なき世界」を望んでやまないバラク・オバマ氏は、ジョージ・W・ブッシュ氏が調印した核協定によって、インドの核大国への野望を支援するようなまねはしたくないと考えていた。インドとの関係と自らの崇高な夢を天秤にかけたオバマ氏は、パキスタンには支援を行なわないと決定した。そのためにパキスタンは原子炉建設で中国の支援を仰ぐようになった。これによって印パ間の勢力争いは激化することになる。このことは、中国はオバマ氏がプラハ演説で説いたような夢に何の敬意を払っていないことを意味している。
インドとの核協定と並行して、日本政府は他のNSG加盟国とともに南アジアでの新しい不拡散体制を模索し、印パ核競争に歯止めをかけねばならない。戦後平和主義と反核感情を考慮すれば、この協定は日本の外交政策の根本的なチェンジである。日本は広島・長崎のトラウマを克服するのだろうか?先の選挙ではどの候補もこれほど重要な政策課題を訴えなかった。この問題はインドとの関係だけにとどまらない。日本の国家アイデンティティーと国際舞台での立場に関わる問題なのである。(おわり)
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