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2010-08-10 00:00
(連載)「核兵器なき世界」の理想と現実(2)
角田 勝彦
団体役員
菅首相が、式典の挨拶で、日本は「核兵器なき世界」の実現に向けて先頭に立って行動する道義的責任を有していること(プラハ演説で、オバマは大戦中の原爆投下に言及しながら、米は核軍縮を目指して「行動する道義的責任がある」と述べている)、日本国憲法を遵守し、非核3原則を堅持すること、及び将来を見据えた具体的な核軍縮・不拡散の措置を積極的に提案し、国際社会の合意形成に貢献していくこと、を明言したことは、この気運に乗ったものといえよう。
現在、世界の核兵器の総数は冷戦期のピークである約7万発から2万3000発まで減少しており、大国間の核戦争の可能性は薄らいだにせよ、核拡散により核兵器を新たに取得する中小国での、事故や誤算や狂気による大惨事の可能性や核テロの脅威は増大している。IAEA(国際原子力機関)によれば、兵器級核物質の紛失や盗難はこれまで少なくとも25件で、闇市場に流れた核物質のうち回収されたのは推定10~30%、残りで核兵器2~5個は製造できる由である。つまり「核兵器なき世界」以外に、核テロは防げない由である。広島の式典に参列した天野IAEA事務局長は、7日長崎での「『核兵器のない世界』に向けたIAEAの貢献」と題する演説で、核物質の違法取引の報告が年間140件寄せられていることを挙げ、「テロリストなどによる核保有を防止することが重要」と指摘した。
「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞の今年の受賞者広島秋葉市長は、8月6日広島平和宣言で、「核兵器廃絶に向けて先頭に立」つために非核3原則の法制化と「核の傘」からの離脱を日本政府に求めた。広島市長が平和宣言で日本政府に「核の傘」離脱を直接的に訴えるのは、前市長の平岡敬氏が初めて言及した1997年以来である。これに関し、菅首相は、6日式典後の記者会見で「核抑止力は我が国にとって引き続き必要だ」と述べ、仙石官房長官は「(非核3原則の)原則を堅持する方針に変わりはない。我が国の重要な政策として内外に十分周知徹底されており、改めて法制化する必要はない」と述べた。7日、広島の原水爆禁止県協議会と県原爆被害者団体協議会は、菅首相発言に対し「発言は全く矛盾する」などと批判する抗議文を送った。
実は、これには前哨戦があった。菅直人首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄・京阪電鉄最高経営責任者)が近く提出する報告書の骨子が、7月下旬報道されたが、それによれば、報告書案は非核3原則のうち「持ち込ませず」を見直すよう求め、さらに米国に向かうミサイルを日本が撃ち落とすといった形での集団的自衛権行使に言及していた。これに関し、行われた質問に対し、菅首相は、5日午後の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使を禁じている政府の憲法解釈について「変える予定はない」と表明し、非核三原則や事実上の武器禁輸政策である武器輸出三原則についても、これを堅持する意向を示していたのである。(つづく)
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