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2010-08-24 00:00
(連載)「核なき世界」への障害(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
きわめて重要なことに、ロシアも中国も「ならず者国家」やテロ集団への核拡散についての懸念を西側とは共有していない。ロシアはS300地対空ミサイルをイランへ売却した。中国は核拡散よりもピョンヤン独裁体制の崩壊を恐れている。大きな食い違いが見られるのは、核テロに関してである。アメリカの政策形成者達は、保守からリベラルに至るまで、テロリストによる大量破壊兵器の入手に神経を尖らせている。ロシアと中国は、それぞれがチェチェンやウイグルのイスラム過激派からさらに攻撃を受けなければよいのであって、核テロに関してアメリカと共通の理解に達する必要は感じていない。
また、中国がオバマ大統領の「核なき世界」の呼びかけに敬意を払っていないことも明らかだ。6月に中国は、インドとの核軍拡競争の懸念も意に介さずに、パキスタンに原子炉の売却を持ちかけた。北京の共産党政府は「アメリカがインドのためにルールを曲げられるなら、中国もパキスタンのためにルールを曲げられる」と考えている。理論上は、そうした地政学的競合はあり得る。しかし、ブッシュ政権期には中国はアメリカを刺激しないようにもっと注意深く振る舞っていた。「自由のための退役軍人の会」を設立した元イラク戦士のピート・ヘグセス大尉の言葉を引用すれば、「中国はオバマ氏をなめている」のである。
大量破壊兵器不拡散教育センターのヘンリー・ソコスルキー所長は「アメリカが途上国と理想的な原子力協定を結んだとしても、他の原子力供給国がそうした取り組みを水泡に帰すような行動に出てしまう可能性がある」と指摘する。オバマ政権が昨年にアラブ首長国連邦と締結した核協力協定に関して、ソコルスキー氏は「アメリカより低価格で、核不拡散の要求基準が緩い韓国のオファーが、UAEで落札された」と述べている。オバマ政権とUAEの原子力協定には拘束力がなく、アメリカはビジネス・チャンスを失っただけに終わった。核不拡散の取組みに大きな影響を与えるのは、バラク・オバマ氏が提唱したような崇高な理念ではなく、商業上の利害である。
オバマ大統領は「核なき世界」に向けて印象的な行動に出たかも知れないが、それが主要核保有国と潜在的な核拡散諸国からは敬意を払われていない。こうした国々がアメリカを「弱い」と見なすようなら、核廃絶の取り組みは何一つ進展しないであろう。特に専制国家の指導者達は、自分たちの利権を求めても、世界平和を求めたりはしない。確かに「核なき世界」が実現すれば、今よりは安全な世界になるかもしれない。しかし、この目的を達成するためには、アメリカは「強さ」を印象づけねばならず、オバマ氏がプラハ演説で述べたような道徳的な後ろめたさをほのめかせばよいというものではない。(おわり)
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