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2010-08-26 00:00
(連載)日米中関係における軍事の論理と政治の論理(2)
角田 勝彦
団体役員
これらの批判は、8月16日に米国防総省が発表した中国軍事動向に関する年次報告書と関連付けられる。同報告書は、中国が初の国産空母の建造を年内に始める可能性などをあげ、中国が海軍力を強め、小笠原諸島とグアムを結ぶ「第2列島線」の東側やインド洋までを作戦範囲に入れようとしていること、及び米空母を狙える対艦弾道ミサイル(ASBM)を開発していることなどをあげ、台湾海峡などで紛争が起きた際に米軍の関与を阻む能力(接近拒否能力)を中国が強化していることを指摘している。また、中国の実際の2009年の国防関連費を、発表された予算の2倍の1500億ドル(約12兆8千億円。なお日本の防衛予算は平成22年度予算で約4兆8千億円)以上と推計し、急速な軍拡とその意図に関し「東アジアの軍事均衡を変える主な要因である」と強い警戒感を示している。
フィリピンを訪れていた米太平洋艦隊のウィラード司令官は8月18日、南シナ海で中国海軍の活動が活発化していることについて「他国を犠牲にして、自国の権利を主張する威圧的な手段には、米国は反対する」と話し、中国の動向に懸念を示した。なお、今年1月の米政府による台湾への武器売却方針の発表を受け、米中軍事対話は中断されているが、対話を早期再開し、核をめぐる米中関係を戦略的に安定化させることも、オバマ政権の重要課題となっている。
すなわち、軍事の論理が、この報告書の考察の中心に置かれているのである。これは実戦を想定し、最小の負担で最大の成果を生む方策を検討する論理である。核による抑止も、拡大抑止も、その一部である。その論理による国際関係の基本認識は友敵構造で、敵との関係はゼロサムの関係になる。中国も同じ軍事の論理に立っている。中国国防省報道官は、8月18日、「(米国防総省)報告は(米中)両軍関係の改善と発展に不利となる」とし、米国側に対し、関係改善に向け良好な雰囲気と条件を造り出すよう求めた。これは、政治の論理だといえる。
しかし、その実際の行動は変わっていない。たとえば、中国は、台湾やチベット問題で使ってきた「核心的利益」という表現を、最近は南シナ海にも使い始めた。7月中旬には、中国海軍の北海、東海、南海の3艦隊からなる「多兵種協同」の実弾演習が南シナ海の某海域で実施された。日本関連でも、これまで数回にわたり、中国の艦隊が沖縄~宮古島の海域を南下して、日本最南端の領土である沖ノ鳥島の西方海域で、軍事訓練や対抗演習を実施し始めた。なお米国防総省が昨年まとめた『中国の軍事力』によると、日本などを射程内におさめる中国の中距離核弾道ミサイルの数は100基前後にのぼっている。中国は「核兵器の先制使用はしない」と宣言しているが、日本をその照準から外してはいないのである。(つづく)
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