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2010-08-30 00:00
「小沢首相」なら国会巻き込む政局に
杉浦 正章
政治評論家
チキンゲームのごとき駆け引きが民主党内で続く中で、テレビの議論を聞いていると、小沢一郎が勝てばどうなるかが分からない民主党議員が多いようだ。政権を取って1年で、若いから政局を理解し難いのはもっともだ。小沢が勝った場合のシュミレーションをしてみる。簡単だ。小沢が勝てば、首相指名選挙を契機に、国会全党派を巻き込んだ再編含みの政局になる。たとえ首相指名を獲得できても、内閣不信任案が待っている。簡単に言えば、「小沢3日天下」で解散・民主大敗が太筆書きの流れだ。かねてから首を傾げる発言が多い民主党国対副委員長・松木謙公が「たとえ政権が3%からスタートしても、数年かけて5%、10%と上げてゆけばよい」と述べたのには驚いた。
10%台でも政権は持たない。あの竹下登でも17%でついにこらえられなくて政権交代だ。3%は国民の支持が誤差の範囲でゼロに等しい。昔なら軍事クーデターが起きてもおかしくない状況となる。いまはまがりにも民主主義国家だから野党が責任を果たすことになるが、3%の政権を野党が黙って数年掛けて10%に上がるのを待っているとでも思うのか。国対委にいながら、そんなことが分からないのだろうか。最終的には菅が勝つと思うが、菅は国民の人気に依存しすぎており、なりふり構わぬ小沢選対が不気味だ。菅側の票読みが上滑りする危険を内包している。まず代表選挙後の臨時国会は、菅直人が再選されれば首相指名はないが、小沢に代われば指名選挙が行われる。参院では与野党が逆転しているから、小沢の指名はまず困難だ。過去に首相指名が衆院と異なったのは5例あるが、憲法の規定により衆院での指名が優先されてきた。問題はその衆院での指名だ。
過半数は241だが、首相指名は得票順で、過半数は関係ない。過去に自民党の40日抗争で福田赳夫が立候補して121票取り、現職の大平正芳が辛うじて138票で指名を獲得した例もある。もし菅が代表選で敗れても、対立候補となって立候補した場合、もう一度勝負できる可能性もあるのだ。民主党の半数、約150人が小沢支持に回っても、小沢に流れる野党票はまずない。菅が民主票150票確保出来れば、野党票が菅に数十票流れただけで「菅首相」となり得る。自民党の谷垣禎一は116票しかないから、菅と自民党または公明党の連立なら確実に勝つ。反小沢の渡部恒三がテレビで「おれいま自民党の皆さんと毎日お付き合いしている」と述べているのは、連立含みの意味が含まれているものとみられる。この難関を小沢がすり抜けて首相になったとしても、待っているのは本会議と予算委における「政治とカネ」の追及だ。
野党はすぐに内閣不信任案を出すよりも、まず参院で首相問責決議案をやすやすと成立させておいて、参院の審議を事実上ストップさせるだろう。そして衆院予算委で「政治とカネ」を浮き彫りにして国民に問題の所在を周知徹底させた上で、内閣不信任決議案を上程する。野党はもちろん、民主党の反小沢グループも同調して、決議案は成立し、内閣は総辞職か衆院解散を迫られる。この場合総辞職の可能性は少なく、小沢が衆院解散に追い込まれれる公算が強い。総選挙になれば、テーマは「政治とカネ」の小沢問題一本に絞られる。各社世論調査で国民の7~8割が「小沢首相」に反対する中で、小沢を支持したグループはほとんどが落選の憂き目をみるだろう。小泉チルドレンが83人中10人しか当選しなかったのと同じように、小沢チルドレン143人の当選確率は数%にすぎないだろう。泡沫(うたかた)のごとく消えるのだ。こうして国民の審判が下りて、20年続いた小沢問題は最終決着となる。
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