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2010-09-04 00:00
民主党代表選と日本のガバナンス
河東 哲夫
大学教授
民主党の代表選、ずいぶんマスコミに露出して、公開論戦みたいなことまで演出して盛り上げているが、アメリカのプライマリー(党員だけが複数の候補者に投票して、党としての候補者を決定する選挙)の表面だけをちょこっとひっかいて、それで民意を反映したと胸を張られちゃどうしようもない。まず党員の数が、天と地のように違う。日本の民主党の党首を選ぶのだと言って大騒ぎされても、それはごく少数の人たちが、自分達一家の内部の都合で決めたものを、あたかも1億総懺悔のように、我々が後で責任を負わされるようなもので、白ける。
もともと議院内閣制の日本は、投票者が直に首相を選ぶシステムになっていない。この頃参加意識が強くなっていて、首相も自分達の手で選びたいという気持ちが高まっているが、どうせまたムードで選んでは、1年くらいで放り出すのだろう。それを承知の上で、煽りたてるマスコミも問題ではないか?
参加意識の高まりと、候補者の精査(アメリカ大統領のプライマリーは1年くらいも続く)、そしてガバナンスの確保、こういった諸点をバランス・総合して考え、憲法も変えて、現代の日本社会に見合った統治システムを作らなければいけないのに、僅か数週間で民主党代表を、それも横から選べと言われても、マスコミをいたずらにもうけさせるだけではないか? という疑問が起こるだけだ。
でも、やっぱり気になる。投票の結果がわれわれの生活に及ぼす影響が、今度は甚大ではないかと思われるからだ。16世紀末の混乱期を描いたロシアのオペラ「ボリス・ゴドノフ」で僧侶が唄う。「おおロシアを覆う哀しみよ。はけ口のない哀しみよ」。当時モンゴル占領軍から独立を果たしたばかりのロシアでは、皇子を殺したゴドノフと、その皇子だと名乗ってゴドノフの皇位を奪おうとする青年僧、そしてこれに農民暴動が加わってしっちゃかめっちゃか、ついに隣国ポーランドにモスクワを数年占領される羽目になった。ロシアは、今の日本より400年も先を行っていたのだ。
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