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2010-09-07 00:00
「はったり」と「強弁」の「小沢財政」を危惧する
杉浦 正章
政治評論家
小沢一郎に財源案をささやいたという財務省幹部の顔が見たい。小沢が得々として打ち出した国有財産の証券化にしても、ひも付き補助金削除にしても、実現不能がむしろ立証されており、逆にひいきの引き倒しになっているではないか。寡黙な小沢が、代表選向けに語り始めたのはいいが、「はったり」と「強弁」ばかりが目立ち、「出てくる」という財源の根拠は全く示されていない。意気込みばかりが先行して、まるで自民党初期の総裁候補を見るようだ。
官房長官・仙谷由人が「具体的に言わないと、説得力がないのではないか」と批判しているが、その通りだ。例えば概算要求一律10%削減にしても、小沢は「自民党政権と同じやり方では財源が出ない」と批判する。しかし、一般歳出の要求額は73兆円に押さえ込まれてきており、目標の71兆円まであと一息の段階だ。一応政治主導がなければ達成できない数字だろう。小沢の言うマニフェスト完全実施は4兆から5兆の新規財源が必要だが、44兆円に抑制するはずの国債を増発しなければ不可能と言ってよい。国土交通相・前原誠司が「今までの(予算編成の)経緯をよくご存じではないのではないか」と述べているとおり、小沢発言は「政治主導・官僚排除」のキャッチフレーズ先行で、理論的根拠に欠ける。
さらに、小沢の主張は「国有財産600兆のうち200兆を証券化すれば、3兆や4兆のカネは出てくる」というが、国有財産の証券化とは、より金利の高い国債を出すのと同じだ。国有財産の皇居を証券化しても、金利が高くて、売れず、世界中の笑いものになるのがオチだ。小沢は、ひも付きの補助金を地方自治体が自由に使える一括交付金へと改めるよう提案しているが、補助金21兆のうち15兆が高齢者医療、国民健康保険、生活保護などの切ろうにも切れぬ経費であり、2,3割も削っては市民生活がパニックに陥る。早速、全国知事会長・麻生渡から「補助金は大部分が社会保障分野など削減が難しいもので、実態に合わない」と反対の声があがった。地方が迷惑なのである。だいたい、事業仕分けに精を出した行政刷新担当相・蓮舫までが「補助金の大多数が社会保障関係だ。削るのは小泉純一郎元首相の時代以上に国民に痛みを押し付ける」と批判しているではないか。
小沢は「代表に選出されれば、まだ間に合う」と、首相の座に就けば予算編成をやり直すことを示唆しているが、現実からかけ離れている小沢の主張を見る限り、公約を転換しない限り、予算編成は不可能だ。それともマニフェスト最大の目玉であった暫定税率撤廃方針を憶面もなく転換させたように、政権に就けば「政治主導」でマニフェスト断念を表明するのか。「政権を取れば20兆や30兆の財源などいくらでも出る」と豪語していた小沢が、政権の中枢の幹事長をやって、何か財源が出て来ただろうか。はっきり言って「小沢財政」では、国の運営が不安だ。「官僚主導」批判は攻撃のためのレッテル貼りであり、いまや「難癖」の部類に入る。
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