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2010-09-09 00:00
「国民全員参加の民主主義」はおかしい
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
民主党の党首選挙の中で出てきた菅総理の「国民全員参加の民主主義」という言葉にちょっと引っかかりました。レトリックがおかしくありませんか。「馬から落ちて落馬してしまった」と同じ言葉使いではありませんか。民主主義の下では、国民は皆選挙の一票を持っていて、政治に参加しているではありませんか?菅さん、その結果あなたはいま総理大臣なのです。あたかも「国民が参加しない民主主義」というものがあって、「それではダメだから、世の中皆が政治活動を本業とせよ」とおっしゃるのですか? 世間の人は皆、経済的に、精神的に自立した市民生活を送るために真剣であり、一々政治のことなど構っておられないのが、実情です。だからあなた方政治家が、政治家として日本の国のことを考えて、その役割を果たしてくれなければ困るのです。
「国民全員参加の安全保障」といったら、国民皆兵制度のことですか?「国民全員参加の外交」といったら、そんなもの成り立ちますか?国民1人1人が十分に生活活動・市民活動ができるように、国民生活を守るのが民主主義でしょう。そして皆がそれぞれの立場で役割分担をして、豊かになれるようにする国家構造の構築が、中央政治の役割だと思います。ですから、政治家には政治家の役割があるはずで、「国民全員参加の民主主義」などと言い出すのは、やめてください。国民は選挙の時に意思表示しますから、まっしぐらに信じた政治をやってみてください。そのために政権交代したはずで、ダメなら国民は、次の選挙で政権を取り替えます。
そんなことより、「最小不幸社会」を唱える菅総理に期待したいのは、世界に向けた人権外交です。ロシアのチェチェン問題、中国のチベット問題、イスラエルの占領地入植問題、さらにアフリカの貧困国の部族抗争など、世界を見渡せば人権外交の重要テーマは山ほどあります。イラク問題についていえば、フセインが核を持っていたかどうかよりも、フセインが国内で人権蹂躙政治を行っていたことが重要です。北朝鮮の拉致問題なども、完全な人権蹂躙問題です。
外交問題では、軍事的パワー・バランスの問題や、グローバル経済の均衡発展問題の他、世界へ向けた人権外交が重要です。しかし、この面で日本外交が、これまで率先して世界に貢献してきたようには見えません。菅総理のような方こそ、世界へ向けた人権外交を日本外交の中心において展開されたらいかがでしょうか?「世界中全員参加の人権主義」なら、素晴らしいではありませんか。
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