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2010-09-09 00:00
中国漁船の逮捕問題は一つのチャンス
吉田 重信
中国研究家
尖閣列島周辺で漁業をしていた中国漁船が日本側に逮捕され、日中間の外交問題になって来た。私は、行く末を楽観しているし、むしろ事件は起こった方がよく、日中間でなんとかうまく解決して、今後日中間で懸案問題を解決するためのよき前例を作るチャンスであると考える。
理由は、まず問題の性質からして、領土問題が深刻な形で現出したのではなく、単に漁民の漁業活動の規制に関する事件であることである。両者は、区別して考えるべきである。中国政府としても、尖閣列島が中国領土であると主張している立場上、自国の漁民に尖閣列島近くで操業するな、とは言い難かったのだろう。だから、事件はいずれ起こるべくして起こったといえる。
しかし、領土問題としての尖閣列島は、これを日本が長年、専門用語でいえば「実効的支配」していた実績からすれば、日本の立場は圧倒的に有利である。中国側として唯一の解決可能な方法は、これを軍事的に紛争化し、昔風にいえば「戦争に訴える」ほかないのである。しかし、これまでの日中間のやりとりの枠組みでは、日中は戦争しないことに事実上なっている。この点については、日本の立場は明らかである。そして、もし中国が尖閣列島問題を軍事的に紛争化するならば、これまで経済発展を重視し、従って平穏な国際環境を必要とする中国にとっては、失う損失は計り知れなく、大きいだろう。だから、中国は問題の軍事紛争化は避けるに違いない。
今後の日中間の折衝を通じて、この事件の発生を奇禍として、事件をうまく解決し、今後再発を防止するシステムを構築できるならば、日中関係はまさに一段と「雨降って地固まる」だろう。日中国交正常化交渉の際に、毛沢東主席が田中首相に述べたように、日中はまさに「喧嘩をすれば、仲良くなる」のを期待したい。
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