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2010-09-17 00:00
尖閣沖衝突事件での日本政府の対応を危惧する
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
尖閣諸島沖の日本の領海内で中国漁船が海保の巡視船と衝突し、船長が逮捕された件で、中国の反応がエスカレートし、常軌を逸したものとなっている。これまで中国側は、宋涛・外務次官、胡正躍・同次官補、王光亜・同筆頭次官、楊潔チ外相が、丹羽・駐中国大使を呼び出して、抗議を繰り返してきた。そして、9月12日午前0時(日本時間午前1時)には、戴ヘイ国・国務委員(副首相級、外交担当)が、丹羽大使を呼び出して「情勢判断を誤らず、賢明な政治決断を下せ」という恫喝的言辞をもって、漁船や逮捕された船長らの早期返還を強く迫った。中国側が丹羽大使を呼び出したのはこれで5回目となる。この回数も異常であるし、真夜中という時間帯も非常識極まりない。
大使というものは、国家元首からの信任状(我が国であれば天皇陛下が認証した信任状)を託されていることからも明らかな通り、国そのものである。それをこのように侮辱的に扱うということは、外交上きわめて無礼な行為であり、我が国が侮辱されていることに他ならない。大使を召還しても全くおかしくないし、それが普通の国の対応であろう。
政府が「誰から抗議を受けても、粛々と国内法に照らして手続きを進める」として、船長の解放に応じていないのは適切である。しかし、「船長以外の乗組員14人を帰国させ、漁船も中国に返還する」と13日の記者会見で仙石官房長官が表明し、13日昼には乗組員14人を中国側の用意したチャーター機で早々と帰国させた。これでは「誰から抗議を受けても、粛々と国内法に照らして手続きを進める」という言葉に反して、中国の恫喝に屈したことになる。仙石官房長官は、船長以外の乗組員を帰還させることで「違った状況が開けてくるのではないか」と、東シナ海のガス田共同開発に関する条約交渉の再開に期待を示したが、認識が甘すぎるのではないか。
中国の常軌を逸したやり方を、日本政府は、中国国内向けのポーズと捉えているようだが、それが正しいとは到底思われない。仮に国内向けに強硬なポーズをとる必要があるにしても、ものには限度というものがある。中国が5回も丹羽大使を呼び出したのは、ポーズとして許される限度を超えている。中国の対応は「外交戦争」と捉えるべきである。中国の抗議が常軌を逸しているからこそ、逆に、乗組員を送還する予定であったとしても、延期すべきであった。中途半端な妥協は将来に禍根を残す。すなわち、中国に、日本に対しては恫喝外交がまかり通るということを改めて示してしまった。今後、東シナ海では今回と同様な問題が頻発する可能性が高い。そのような事態が起きた時に、中国の恫喝に毎回直面させられることになるであろう。外交的大敗北であると言わざるを得ない。
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