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2010-09-18 00:00
菅内閣の布陣と今後の日中関係
吉田 重信
中国問題研究家
昨日発足した菅改造内閣は、今後の能力発揮が期待される壮年層中心の布陣である。岡田幹事長や前原外務大臣のような硬派(必ずしも保守右派ではない)と柳田法務大臣、岡崎国家公安大臣などの左派などを組み込んだ布陣であり、自民党にとっても攻めにくい手ごわい相手となろう。小沢勢力排除の狙いは明らかであるが、これは小沢勢力が国会議員数で過半数に達しなかったことに勢いを得て、国民の世論に沿うものである。小沢の代表選立候補の意図がどうであれ、小沢は、結果として菅勢力の強化を助け、その政権運営を楽にする結果となった。鳩山元首相は、これを見越して、わざと小沢を支持したと解すれば、彼の不可解な行動も納得できる。
菅首相は、政策の重点項目に、経済、財政、社会福祉を挙げており、現在の日本社会の抱える問題に対処する意識としては、極めて妥当であり、国際的評価も高まるだろう。結果として、円高、日本株高の趨勢となろう。また、片山総務・地域主権推進担当大臣の起用によって、地方重視の姿勢が強化されるとみられ、これも日本社会を活性化する一助となろう。地方分権主義は、米国と多くの西欧諸国において活力を生んでいる。岡田幹事長と前原外相の起用によって、外交政策の方向は以前より鮮明になり、とくに中国に対しては、かなり強い面が出てくると予想される。中国としては,菅政権は手ごわい相手となろう。しかし、当面の中国漁船拿捕事件がエカレートすることはないと考える。たとえ、一時そうなっても、収まるところに収まり、日中関係は、例によって「雨降って地固まる」公算が大きい。
むしろ、前原外相は、外交政策の基本として「国際経済重視」を挙げ、FTA締結などの重要性に触れており、軍事力よりも経済力を重視する、吉田茂によって敷かれたこれまでの路線継続を確認しており、妥当な方向である。とくにFTA重視は、よい着眼である。彼が師とする高坂正堯(海洋国家論と最小限度の軍備)の影響と見るならば、歓迎できる。前原を米国の手先とみて、彼は中国との関係を悪化させるとの見方もあるが、筆者は組みしない。筆者は、彼をよい意味でのナショナリストとみる。かかる陣容によって、菅政権は、今後3年の間にみるべき実績(消費税増額と社会保障のための社会資源の再調整)をあげて欲しいというのが、国民の期待であろう。
菅政権が実績をあげるにつれて、米国や中国も、それぞれの国内で抱える深刻な問題の解決に向かうという、好循環の影響が出る可能性がある。米国の抱える問題とは、深刻な国内経済状況であり、中国の抱える問題とは、ますます強まる民衆の民主化への要求に政権がいかに対処できるか、という問題である。結論として、中国は、内部に抱える深刻な諸問題のために、対外関係においてトラブルを起こす余裕はないと見る。他方、内部矛盾の故に対外政策を硬化するとの見方もありうるが、そうすれば、中国は内外での困難を一層多く抱えることとなる。中国の現政権は、そこまで冷静さを失い、対外的に強硬化することはあるまい。
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