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2010-09-24 00:00
中国「やらせ」論を説く前に
吉田 重信
日中関係問題研究家
本日付けの本欄への松井啓氏の投稿「中国漁船衝突事件は、中国側の『やらせ』である」について、一言異論を述べたい。中国側の「やらせ」論を説く前に、まず、理解すべきは、今回の事件は、日本法制下で公務執行妨害の疑いがある行為についての処理をめぐる問題であって、尖閣諸島をめぐる領土問題とは関係がないことである。日本政府はこの立場を一貫して明確にしている。この点に双方に誤解がないようにすることが、肝要である。また、松井氏の説く、「事件は中国側の『やらせ』である」という物語が成立するには、中国漁船が中国当局の指示の下に、日本領海内に進出し「海上保安庁巡視船に捕獲されそうになったら、衝突せよ」との指示を実行したという肝心な点が、立証される必要がある。
この点は、日本の法律や事件処理例などにしたがって、今後究明されるろう。したがって、この点が十分に解明された後に、「やらせ」を論じても決して遅くないと考える。他方、公務執行妨害罪が成立するか否かの認定は、日本の市民の立場から見れば、極めて微妙な問題であり、具体的な状況に即して慎重に裁定されなければならない。さもないと、取り締まりに名を借りた当局による市民への横暴を許すことになりかねないからである。また、今回事件の収拾策として参考になるのは、2008年に発生した台湾魚遊船の沈没事件の処理である。
事件は、台湾の魚遊船が尖閣列島近くの海域に侵入し、これを追い払おうとした海上保安庁巡視船「こしき」との間に衝突が発生し、台湾魚船が沈没し、台湾当局は、軍事的措置も辞さないとの態度を一時示したことによって、日台関係が緊張したのである。結局、衝突の際の「こしき」側の落ち度が認められたので、「こしき」の船長が台湾魚遊船の船長あてに謝罪する手紙を発出して、日台間の緊張が解消され、以後日台関係は、むしろ順調に発展した。
松井氏のように、憶測だけで、中国側の「やらせ」論を時期尚早に説くのであれば、日本側の「やらせ」論(たとえば、巷に流布する「前原国土相・外相はCIAの要員である」などの説)をいくつでも創作可能となるが、ここではこれ以上論じない。この問題は、いずれ日中双方の努力によって、円満に解決されるだろう。それを望まない、一部勢力には遺憾であろうが、、、。
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