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2010-09-25 00:00
(連載)日中衝突で日本は反転攻勢に出よ(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
日本政府のこれまでの対応は、乗組員と漁船を返還したこと以外は、大きな失策はないと言える。逮捕した船長をあくまでも我が国の司法手続きに則って処置するとしているのは、全く適切である。中国側が打ち出してきた諸々の「報復措置」に対しても、今のところは不適切な譲歩に繋がるような言動はほとんど見られない。しかし、日本政府の対応は、余りにも守勢に回ってしまっている。海外の論調などを見ていると、第三国は、米国も含めて(米国政府はそうではないだろうが)、尖閣の問題を適切に理解していないようである。
すなわち、尖閣諸島は歴史的に我が国固有の領土であり、沖縄返還に際しても米国から異論なく返還され、わが国が実効支配しているものであるが、周辺の海底に資源が埋蔵されていることが明らかになった1970年代になってから、中国や台湾が「後出し」の形で領有権を主張し始めたという経緯がある。このへんの理解が薄く、日中が同格で領有権争いをしているかのような誤解を与えているように見受けられる。我が国は、尖閣問題に関して一層の広報活動を行なう必要がある。また、仮に国際司法裁に提訴されたならば、堂々と受けて立つという姿勢を鮮明にしておくことも考慮に値する。
今回の衝突事件に関して言えば、北沢防衛相が9月21日の記者会見で示唆したように、衝突の様子を海保が撮影したビデオを是非とも公開すべきである。ビデオの公開をめぐって閣内で意見の不一致があり、対応が遅れている間に、中国側からビデオを公開するよう要求してきた。先手を打たれてしまったということであり、外交的失策に他ならないが、今からでもやはり公開すべきである。ビデオの公開は、対中というよりも、対国際社会で、日本の主張の正当性のアピールである。一方、東シナ海のガス田問題に関しては、海洋法裁判所に提訴することを真剣に検討すべきである。政府内にも、中国が単独開発に踏み切った場合には国際海洋法裁判所への提訴を辞さずという声があると聞くが、そろそろ実行の時が来たのではないかと思う。さらに、対抗措置として、日本側からの試掘の実施も現実的な問題として視野に入れるべきである。
また、東シナ海のガス田問題は、単に日中間の境界画定問題であるに留まらず、中国の海洋進出の問題である。これは、明らかに米国の世界戦略に触れるものである。日米関係が良好であれば、円滑に日米連携が行なわれるのであろうが、現在はそれとは程遠い状況にある。しかし、この問題が米国の国益に無関係でないことを何としてでも米国に納得させなければならない。むしろ、東シナ海での中国の振る舞いについて日米の協議を呼びかけることにより、利害関係の共有を確認し、逆に日米関係修復のきっかけとすべきであろう。また、日米がそのような協議を行っていることを中国に見せつけること自体が強いメッセージとなる。そして、中国が軍艦による示威行為を検討している以上、東シナ海近辺での日米合同演習を行なう必要がある。中国側は、温家宝首相が、逮捕された船長の無条件即時釈放の要求に乗り出してきた。これは明らかに外交的戦争の通告である。もちろん、いずれは、日中両国はどこかで妥協しなければならない。我が国は、中国に対して冷静な対応を呼びかけるといった消極策に留まるのではなく、反転攻勢に出なければ、不利な条件で妥協を強いられることになる。(おわり)
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