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2010-10-05 00:00
(連載)日中首脳会合後の日中関係(1)
角田 勝彦
団体役員
10月4日夜(日本時間5日未明)ブリュッセルでの日中首脳会合で、両首脳は「お互い、今の状況は好ましくない」として、両国の戦略的互恵関係を発展させるとの原点に戻り、日中間のハイレベル協議を適宜開催するとともに、影響が出ている民間交流を復活するとの合意に至った。これにより日中関係は、残るフジタ社員1名の釈放を当面の懸案としつつ、政治の論理が主導的役割を果たす状態に戻ることが期待される。しかし、菅内閣は、この事件を教訓として、軍事の論理を忘れず、早急な国境警備体制強化及び日米同盟再活性化や関心を同じくするアジア諸国との連携強化に努めるべきである。
ASEM首脳会合に際する 菅首相と温家宝首相の約25分の話し合いは、同会議のワーキングディナーの後に会場外の廊下のイスに座るかたちで行われたとされ、最近まで話し合いに乗り気でなかった中国側は、「正式の会談ではない」と説明しているようであるが、両国の慎重な下準備に基づき阿吽の呼吸で行われた会談と解して良い。影響が出ている民間交流の復活はもちろん、残っているフジタ社員1名の釈放やレアアースなどの輸出正常化への好影響が期待される。尖閣については、双方がそれぞれの主張を繰り返すに留まったのはやむをえないところだろう。「覆水盆に返らず」で、中国人船長の突然の釈放による我が国の威信の低下は否めないが、「塞翁が馬」というように、今回のゴリ押しは、中国にも国際的悪影響を与えている。たとえば10月1日発行の仏紙ル・モンドは、中国が尖閣諸島沖での衝突事件をめぐる一連の対応で「粗暴な大国の顔をさらした」と批判する社説を1面に掲げた。
菅首相は、ASEM出席に際し行ったオーストラリアのギラード首相、韓国の李明博大統領、ベトナムのズン首相、フランスのサルコジ大統領、欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領、バローゾ欧州委員長らとの会談でも、事件と我が国の対処ぶりを説明し、理解を得た由である。菅首相がASEM全体会合での演説で「資源取引や貿易を含め、国際社会の共通のルールを相互に順守することが重要」と指摘し、さらに中国を念頭に置いて「関係国や地域が責任ある行動をとりながら、強固な信頼関係を醸成し、平和と安定の礎を築いていくことが不可欠だ」と訴えたのも、レアアースなどの輸出正常化に影響を与えよう。
我が国としては、いっそう国際理解を求めることが必要である。前原外相は、9月28日の記者会見で、今次事件について「世界に説明することが大事だ」と述べ、外務省から在京各国大使館に説明するとともに、在外公館にも各国政府へ説明するよう指示したことを明らかにした。なお、重要資料として、事件の様子を撮影したビデオ映像があるが、その国会提出と公開については意見が分かれている。フジタ社員一人の拘束が続いているため、当面は中国側の対応を見極めるべきだとの意見が強まったのである。これはそれなりに理解できるが、一部にある「ビデオ公開は、中国側への嫌がらせになり、友好を害するので、反対」との意見は問題である。中国側が「巡視船は漁船に衝突してきた」との発表を行って、日本側の「脱走を企てた漁船が2度にわたり巡視船に体当たりをしてきた悪質なケースだから、逮捕に踏み切った」との説明を否定している以上、嫌がらせ云々の心配は問題外である。9月22日頃に中国外務省副報道局長は、ビデオ公開を日本に要求していたのである。(つづく)
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