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2010-10-15 00:00
長期持久戦化を狙う小沢の起訴議決無効の提訴
杉浦 正章
政治評論家
検察審査会の強制起訴議決は無効だとして、小沢一郎が国を相手に行政訴訟を起こすという。あきれてものが言えぬ。強制起訴を可能にした検察審査会法の改正には、2004年に自ら賛成しているのに、自分の利害が絡むと異を唱えるのか。民主主義の否定であり、自分への批判は許さないというファシズムに直結する。往生際の悪さは並大抵ではない。無効訴訟の論拠は、強制起訴は検察審の2回の議決で行われるべきものであるにもかかわらず、事実上は1回の議決のみで行われており、これでは重大な欠陥があるので、検察審法の違反だというものである。1回目の議決は「虚偽記載」に関する議決のみなのに、2回目に「小沢からの借入金4億円」を付け加えたから、1回しか議決していないというのだ。
与党議員が、国を相手に訴訟を起こすという前代未聞のケースに、官房長官・仙谷由人もさすがに「刑事司法過程の処分は、行政訴訟法の処分に該当しない、というのが一般論だ。刑事裁判の中で争うしかない」と疑問を呈した。民主党内、とりわけ小沢グループには、検察審制度そのものを否定する空気が濃厚にあり、第五審査会が4月に1回目の起訴議決をした直後に「司法のあり方を検証・提言する議員連盟」を発足させて、圧力をかけ始めている。弁護士で、議連事務局長の衆院議員・辻恵が、「不起訴となった人物を国民の感情で被告席に簡単につけていいのか」と批判している。小沢の提訴は明らかにこの流れを背景にしたものだろう。
小沢の思惑は、問題の長期持久戦化にある。まず提訴により、議決の無効確認か、取り消し、差し止めを狙う。1審の入り口で弁護士による起訴手続きををできにくくし、裁判の遅延を図る。裁判に入っても有罪なら控訴、上告で引き延ばして、10年裁判に持ち込む。そのうちに自分の寿命も尽きるくらいに思っているかも知れない。事実、田中角栄はロッキード事件上告審中の1993年に、死亡により公訴棄却(審理の打切り)となっている。どこまで恩師を真似るのか、と言いたいくらいだ。小沢のやり口は、権力者の司法に対する横暴としかいいようがない。秘書が逮捕されれば、検察を批判し、自らが不起訴になれば、逆に検察を賞賛して、あらゆる政治活動の根拠に位置づける。今度は民主党も含めて賛成した検察審法による起訴に真っ向からなりふり構わぬ圧力をかける。検察審は「素人集団」と決めつける。発想が権力主義一色であり、全体主義にも通ずる。検察の決定を素人がひっくり返すのはおかしい、というのが一貫した論拠だ。
しかし、検察審は裁判員制度と同様に、専門家による誤判断を補う目的で導入されたものだ。主権者である国民が良識と市民感覚に照らして、専門家の判断を是正する、という民主主義の根幹の思想を背景にしている。事実、土地購入代金4億円があるにもかかわらず、銀行から利子を払って借りるという、誰が見ても偽装工作としか思えない問題が、再提起されているのであり、検察審の判断は「正常」の一語に尽きる。自分が賛成して作った制度を、自分の利益にならないと思えば否定する。これでは、遠山金四郎ではないが、「御政道は成り立つめえ」。検察審の決定に瑕疵(かし)があるなら、もう一度議決をすれば済むだけだ。あきれ果てた延命策でなく、裁判に自信があるなら、堂々と裁判闘争を展開して、早期決着をつければ良いではないか。
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