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2010-10-17 00:00
(連載)劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞の意味(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
今回の劉氏のノーベル平和賞受賞で、中国はソフトパワーを大いに減ずることになろう。ただ、それで中国がその行動を国際的規範に沿うように改めるかといえば、そんな甘い話ではあるまい。しかし、中国はその横暴な振る舞いによって、自らのソフトパワーを失っている。中国は、劉氏が2010年のノーベル平和賞候補として挙がっている段階から、ノーベル賞委員会に圧力を掛けてきた。まことにもって愚かな行為であったという他はない。また、劉氏へのノーベル賞授与を不満として、駐中国ノルウェー大使に抗議したとも伝えられている。もちろん、尖閣沖衝突をめぐる非常識な対日強硬姿勢も中国の傲慢な振る舞いの一つである。とりわけ、レアアースの対日輸出制限は、各国の警戒と批判を招いている。
本来人権問題に敏感なはずの欧州は、中国の経済力を経済回復の原動力としたい意図から、現在中国の国際的規範違反に甘い傾向が見られる。こうした思惑が中国のソフトパワー喪失を覆い隠している感がある。しかし、長期的には、国際的な規範や価値観(当然これらは経済に関するものも含む)を共有できない中国と経済的な結びつきを強めることは、リスクが高いという動きになってくるはずである。中曽根康弘・元首相は、外交の原則として「世界の潮流から外れるようなことをしてはいけない」と言っている。至言である。
ヤーグラン委員長は「中国での人権抑圧に目をつぶれば、世界での人権基準を下げることに直結する。経済などの権益のために人権という普遍的価値の基準を下げることがあってはならない」と述べている。これは、理想主義的リベラリズムからの真正面の警鐘である。それだけでは世界の多くの国を説得できないであろうが、中国の実際の素行の悪さと相まって、効果が表れてくるということになるのではないかと思う。
尖閣沖衝突問題をめぐって、中国の国際的規範違反に直面している我が国は、中国を非難する資格も必要も十分に備えている。フジタの社員が拘束されている件に関しては、中国は「国内法の問題だ」と言うに決まっているが、中国の国内法が、「法の支配」に則ったものであるかどうかを追及してしかるべきであろう。そういう意味で、民主党の枝野幹事長代理が「中国には法治主義がない」といったのは適切だったのだが、後に続く者がおらず、そのままうやむやになってしまったのは遺憾なことである。我が国は、対中政策に真剣に「人権カード」を取り入れるべきであろう。(おわり)
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