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2010-10-23 00:00
(連載)オバマ外交は「好かれるアメリカ」を卒業できるか?(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
ロシアも安全保障上の課題である。クリントン長官は今年の7月にグルジア、ポーランド、ウクライナを訪問して対露関係の「リセットをリセット」し、ロシアの拡張主義を牽制した。リセットの象徴となる新STARTは現在、上院での批准に向けて議論されている。ロバート・ゲーツ国防長官は2008年11月にブッシュ政権の閣僚としてカーネギー国際平和財団で行なった講演で、「アメリカが核兵器の新規開発を行なっていないうちに、ロシアは新核兵器を開発した」と、深刻な懸念を述べた。ジョージ・H・W・ブッシュ氏とボリス・エリツィン氏が前回のSTARTを締結した時とは違い、オバマ政権は力のバランスがアメリカに優位でない時に、合意を形成をしようとしている。保守派は新STARTを批判している。ロシアは10月7日にブラバー・ミサイルの発射実験に成功した。対露関係「リセット」は性急だったのであり、今や再検討が必要である。
さらに、イランとの対話路線も何の前進も見られない。イランのマフムード・アフマディネジャド大統領は、経済不振、民主化運動の活発化といった国内問題から国民の目をそらそうと躍起である。ロンドンのMEEPASという中東専門のシンクタンクを主宰するメイール・ジャベダンファール氏は9月にフランス24に出演し、「イスラム革命以来のイラン経済は、悪化をつづけ、頭脳流出と薬物濫用が増加している」と述べている。そのように絶望的な内政が、アフマディネジャド氏を核開発に駆り立てている。また、外交問題評議会のバーナード・グワーツマン編集顧問は「最高指導者アリ・ハメネイ師とアリ・ラリジャニ国会議長の相克によって、アフマディネジャド氏は指導力を発揮できない」と言う。そうした事情が、アフマディネジャド氏を一層の強硬外交に駆り立てているのである。
以上のような事情の変化により、アメリカの外交政策は平常に戻るかも知れない。ロバート・ケーガン氏が述べる通り、ヨーロッパとアジアの民主主義諸国との同盟は再強化されるだろう。問題は、オバマ大統領が敵対勢力の撃破と脅威の封じ込めのために、充分な軍事的関与を行なう意志があるかどうかである。
アフガニスタンでの戦争は、オバマ氏が「アメリカの大統領」なのか、「ポスト・アメリカの大統領」なのかを判断するうえで、リトマス試験紙となるであろう。『ワシントン・ポスト』紙のチャールズ・クローサマー論説員は、ボブ・ウッドワード氏の著書『オバマの戦争』を参照し、「オバマ氏は心理的にアフガニスタンから撤退している」と語る。昨年の12月1日にオバマ氏がアフガニスタンの兵員増派を公表した際には、米軍を18ヶ月以内に撤退させるとも表明した。オバマ氏は、出口戦略を模索しているが、対反乱戦略に必要不可欠で、スタンリー・マクリスタル大将もデービッド・ペトレイアス大将も推奨している制度構築には、消極的である。オバマ氏は中間選挙を目前に控え、内政と民主党内の支持取り付けに手一杯である。オバマ大統領が、対テロ戦争での重要な任務を信じていないことは、由々しき問題である。さらに、中東からの米国の早期撤退とそれに伴う力の真空の発生を見れば、中国が、中東でも、アフリカで行なっているような勢力拡大の野心を抱きかねない。(つづく)
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