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2010-10-29 00:00
(連載)TPP(環太平洋パートナーシップ)への参加促進(1)
赤尾 信敏
日本アセアンセンター前事務総長、元タイ駐在大使
管内閣は本年6月に閣議決定した新成長戦略の柱の一つとして、アジア太平洋諸国との経済連携の拡大・深化を謳い、10月の施政方針演説で、「TPP交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築をめざす」ことを強調した。私はこの管政権の方針を全面的に支持するもので、万難を排して「有言実行内閣」の行動に移してほしい。しかるに、最近民主党内及び閣内で反対論が出てきたのは不可解である。日米EPA(経済連携協定)交渉を謳った昨年の民主党マニフェスト発表に際して、当時の小沢幹事長が、戸別所得補償制度の導入により、日米EPAの締結は問題ない、と発言したことに私は非常に勇気づけられた。
この小沢支持派議員を中心とする110人の議員がTPPへの反対を唱え始めたのである。当時の代表たる鳩山前首相がこの議員グループの発起人になったことは、更に理解に苦しむ。普天間基地問題などで軽率・迷走発言を繰り返し、内外の信用を失った前首相は、何を考えて行動しているのであろうか。近視眼的な派閥の論理でなく、中長期的な国家の利益を念頭に、一貫性ある言動をとってほしい。少子高齢化、人口減少社会を迎えた日本が、その経済活力を維持するには、世界経済の成長センターたるアジア太平洋を舞台とした生産・流通・消費ネットワークの構築が不可欠である。日本一国内だけの生産・販売活動では市場規模は縮小の一途をたどり、農業を含めて日本経済の将来はない。まさに待ったなしの状況にある。
日本の企業は、既に円高が進んだ1980年代以降、欧米諸国やASEAN(東南アジア連合)諸国への海外展開を拡大・強化し、欧米企業に10年遅れた21世紀初頭からは、中国への進出も拡大してきた。他方、中国への一極集中のリスクが如何に高いかは、小泉政権時代の反日デモ、日系企業を狙い撃ちした賃上げスト、レアアース輸出制限を含む経済の政治化など、多々事例がある。日本企業はかかるリスク回避策の一環として、以前から「中国+1」の海外投資政策を採用してきている。この点、ハイテク産業に不可欠なレアアースの輸入先の中国依存への傾斜は、リスク意識の欠如といえる。
日本政府は、このような企業ベースの海外展開を一層促進するような制度構築を進める必要がある。既に小泉政権時代から、東アジア共同体構想を念頭に置きつつ、ASEAN諸国とのEPA交渉を進め、ASEAN中心の経済連携は一応の形が整った。東アジア共同体構想推進の立場からは、本来、中国、韓国とのEPAの締結、そして東アジア全体の自由貿易地域設立が望まれるが、日韓EPA交渉は過去5年間中断状況にあり、中国とは交渉開始の目途も立っていないし、仮に開始したとしても、その早期完結は楽観できない。従って、東アジア自由貿易地域の設立に向けて関係国、なかでも中国、韓国への働き掛けを継続しつつも、最近急速に進み始めたアジア太平洋地域での自由貿易協定交渉に参加する、という2正面作戦を追求する必要がある。(つづく)
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