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2010-10-30 00:00
(連載)TPP(環太平洋パートナーシップ)への参加促進(2)
赤尾 信敏
日本アセアンセンター前事務総長、元タイ駐在大使
鳩山前首相は昨年9月の登場早々、東アジア共同体構想を打ち上げて注目されたが、具体的中身を提示せずに退場した。菅首相によるアジア太平洋諸国との経済連携の拡大・強化の提唱はより現実的である。小泉政権時代から進めてきた一連のEPA締結を更に前進させ、広域的経済統合の実現を目指すもので、高く評価される。TPPは、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド及びチリといった小規模経済諸国間のFTA(自由貿易協定)であるが、4カ国は各種国際競争力ランキングでもトップクラスにあり、TPPはまさに模範的なFTAである。米国、オーストラリア、ベトナム、マレーシア及びペルーが参加交渉を始めた。「日本もこの交渉に早急に参加する」との管首相の立場に、前原外相、仙石官房長官なども同調している。
この種FTA交渉に当たって日本の最大の課題は、農業の自由化問題である。日本が締結済みのEPAでは、コメなど多くの農産物が例外扱いにされた。このため、締結済みEPAにおける日本側の自由化(関税撤廃)率が、途上国たる相手国のそれより低いケースが大半となっている。農業はこの種交渉での日本の長年のアキレス腱である。TPP交渉の成り行き次第で、一部農産品の例外扱いは可能かも知れないが、大幅例外扱いは望み得ないし、求めるべきでもない。過去の失敗と決別し、貿易自由化を農業の構造改革、競争力強化に結び付ける政策を優先させる必要がある。
コメに778%(従価税換算)の輸入関税を掛けて保護する現行方式では、日本農業の一層の衰退を回避できない。農水省発表の「2010農林業センサス」でも、農業就業人口は年々減少し、高齢化(平均年齢は65.8歳)傾向にも歯止めがかかっていない。耕地面積の集約化ペースも遅々として、一農家当たり2.2haでは、フランスの50ha、米国の170haとは競争にならない。政府が実施中の戸別所得補償の中身も、真に農業の競争力強化を目指すのか、単なる「ばらまき」に過ぎないか、など多々議論がある。真に競争力強化に繋がる所得補償のあり方を検討する必要がある。
私は、1993年にまとまったGATT(WTOの前身)のUR(ウルグアイ・ラウンド)交渉を担当したが、農業合意の代償および国際競争力強化のためとして、当時の政府は6兆円の予算を付けた。この巨額予算が果たして国際競争力強化に寄与する形で活用されたのか、不明である。当時に比べて日本を取り巻く経済環境が大幅に変わった今日も、類似の議論の繰り返しで、進展がないのは残念である。当時の韓国は、日本以上に農業保護的で、10年で国内消費の4%までの輸入(ミニマム・アクセス)を認めるUR合意(日本は6年で8%までの輸入)を受諾するにあたって、大統領がテレビで涙を流して国民に謝罪、農業大臣を更迭した光景は忘れられない。この韓国が、今や政策を大転換し、米国やEU(欧州連合)ともFTA交渉をまとめた。日本としても見習うべき点が多い。(おわり)
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