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2010-11-08 00:00
“尖閣義賊”出現は“御政道”が悪い
杉浦 正章
政治評論家
義憤に駆られた“義賊”による尖閣ビデオ公開に、“奇妙な連帯感”が日本列島をおおっている。「クーデターだ」「テロだ」と民主党内が姦(かしま)しいが、首相・菅直人はなぜビデオ流出事件が発生したかを冷静に考えてみたことがあるか。事件発生以来の政府の対応に、国民の憤まんが積もりつもった結果に他ならない。起きるべくして起きた事件だ。内部告発説が強いが、かねてから官僚による内部告発を奨励し、政権を取ってからは、いやらしい“密告サイト”ともいうべき「ハトミミドットコム」を立ち上げたのは、前首相・鳩山由紀夫にほかならない。たとえ内部告発者を摘発しても、白昼堂々の“強盗”船長は釈放して、“義賊”は杓子定規の守秘義務違反の刑事罰では“大岡裁き”が成り立つまい。内部告発者に言いたい。自ら名乗り出て、公開の理由を堂々と述べよ。
言われているように海保の内部告発とすれば、なぜ“義賊”が生まれたかは簡単だ。海保の現場が体を張って、命がけで逮捕し、送検した船長を、紛れもない“政治主導”で釈放した。しかも、責任を1地方検事に押しつけるという、政治家としてもっとも卑劣な対応を、菅政権が「結託」して行ったからだ。加えて、尖閣・北方領土問題で見せた政権の卑屈なまでの対中、対露弱腰外交、普天間問題での日米関係毀損などは、真っ当な仕事をしている告発者にとっては、我慢のならないものであったに違いない。また、官房長官・仙谷由人がビデオ非公開の理由を、刑事訴訟法47条の「証拠物は公判前には公にできない」との小賢しい法律論に持ち込んだことも、カチンときたに違いない。船長を“超法規”で釈放しておきながら、刑訴法もあったものではない。47条は「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」とも規定している。そのことを仙谷は、弁護士のくせに知らないのか。
また、週末は日本中の酒場が、「ビデオ公開の月光仮面に乾杯」で沸きに沸いたのを知らないのか。都知事・石原慎太郎が「『冗談じゃない。実態を見てもらいたい』という内部告発だろうが、結構なことじゃないか」と、珍しくいいことをいった。日本政府にとっても、プラスの要素はある。政府が直接公開すれば、中国は激しく反応せざるを得ないが、第3者からの流出では、文句のつけようがない。ビデオの内容を見ても、国際的なPR効果は満点だ。初代内閣安全保障室長・佐々淳行が8日付産経「正論」欄で「体当たりビデオは、国連、国際会議などあらゆる舞台で公表し、日本の正当性をPRせよ」と述べているが、その通りだ。中国は後ろめたいのか、大人しい反応に転じている。週末デモもやらなかった。“義賊”による公開は、共産党機関紙『人民日報』が「風は吹けども、山は動ぜず」と、「尖閣事件で日中関係の大局に変化はない」とする論評を掲載した直後でもあった。
要するに、“義賊”の行為は、毛沢東が紅衛兵に送った言葉を借りれば「造反有理」とも言える側面があるのだ。これに対して民主党の反応はどうだ。ルーピー鳩山は「海上保安庁か、検察のどちらかが流したのはほぼ明らか。政府にいる人間が政権批判を行う情報クーデターとすれば、政権にとって大変厳しい話だ」とクーデター扱い。前総務相・原口一博は「国家に対する反逆に近い」とありもしない“国家反逆罪”を持ち出した。杓子定規にしかもの事を考えられない幹事長・岡田克也に至っては、「公務員の守秘義務違反であり、刑事罰にもつながる」のだという。まるで石を見て「あれは石だ」と形容しているに過ぎない。法治国家だから、検察が捜査に乗り出したのも、リークが罪に問われるのも当然だ。刑事罰も当然だ。しかし、ことは政治責任化する。担当閣僚の責任はもちろん、首相の責任まで問われる事案になり得る。そのことは覚悟しておくことだ。みんなの党代表の渡辺喜美が7日、「民主党は犯人捜しをやっている場合か。もし犯人が見つかっても、その人は英雄になり、民主党政権は恥の上塗りになる」と述べたが、そのとおりだ。そもそも民主党の従来取ってきた路線を振り返ったらどうか。今回は適用困難だが、連合と共に推進してきた「公益通報者保護法」は内部告発者を守るための法律だ。閣議決定までして設置した「ハトミミドットコム」に至っては、公務員の内部通報者・密告者を奨励するサイトではないか。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)に向けて、政府部内には胡錦涛やメドベージェフと菅との首脳会談実現を心配する空気がある。これにマスコミも影響を受けているが、いずれも問題の所在が分かっていない。恐る恐る来日すべきは中ソ両国首脳であって、懇願して首脳会談を「実現していただかなければならない」場面ではない。駐露大使の一時帰国で抗議したまではよいが、たった5日間の滞在で早くも帰任とは、恐れ入谷の鬼子母神だ。一時帰国どころか、「瞬時帰国」ではないか。「足元を見て頂戴」というようなものだ。ロシア外務省の高笑いが聞こえる。とにかく会談が実現したら、菅は毅然として領土上の主張を展開すべきである。日本中ばかりか、アジア諸国注目の中での会談となる。ここで腰砕けになったら、霞が関で内部告発の連鎖反応が起きてもおかしくない雰囲気であることを指摘しておく。
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