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2010-11-08 00:00
流出したビデオから読み取れることは何か?
吉田 重信
中国研究家
11月8日付の本欄への杉浦正章氏の投稿「“尖閣義賊”出現は“御政道”が悪い」について、コメントする。杉浦氏の「義賊」説には、多くの無理な推測があると考える。筆者は、流出した問題のビデオ映像を点検したが、結果として、全く反対の見方が可能であると考える。すなわち、ビデオ映像は、中国側の主張に有利な資料ともなりうる部分を含んでおり、むしろ流出者は「義賊」などではなく、日中関係をさらに混乱させる悪意をもって流出させたのではないか、と考える。
理由は、三点ある。一点は、衝突事件発生の前に、海上保安庁の巡視船が中国側漁船に「領海から速やかに立ち去れ」と呼びかけていた事実である。筆者の理解によれば、これまで中国漁船は何度も頻繁に尖閣列島近くに出漁したが、いずれも警告を受けた程度で、逮捕されたことがないとされる。今回、海上保安庁の巡視船が、中国漁船を拘留に及んだのは、これまでの対応方針を逸脱して、強硬策に転じた可能性がある。一説では、海上保安庁は、事前に所管大臣であった、前原国公大臣の承認を得たという。
二点は、公開されたビデオ資料では、中国漁船から二隻の海上保安庁の巡視船に衝突したかのように見えるが、むしろ巡視船側が、中国漁船の進む航路に近づくか、あるいはその航路を遮り、結果として中国漁船をして巡視船に衝突するように追い詰めたとも、読み取れるのである。この肝心な個所を判定するためのビデオ資料が公開されていないことから考えると、後者の場合の可能性が大きいと考える。
三点は、そのような資料を海上保安庁側が公開しないのは、日本側巡視船が中国漁船を、危険を伴う強硬措置によって拘留した事実そのものを隠避する意図があったのではないかと、疑いたくなる。この点につき、那覇地検の検事が、9月24日、当該船長を不起訴処分にした理由として、「船長の行為は、追跡を逃れるためにとった行為であり、計画性は認められない」旨説明していることは、中国側が主張する「日本側が衝突させた」説の裏付けの証左となろう。筆者がこれまで中国筋に確かめたところでは、中国側は、紛争に連なる事件は、前原国交大臣の意向によって、仕掛けられたと見ているようである。
いずれにしても、本事件の原因や背景などについては、すべての関連ビデオの公開を待って、科学的に判断すべきであると考える。それまでは、たんなる憶測によって、あれこれと論じるのは、益なく、無駄な行為であろう。その意味で、すべての関連資料の公開が望まれるのである。また、関連ビデオの流出自体は、瑣末な出来事であり、「義賊だ」とかと、大騒ぎするほどのことではない。むしろ、民主主義体制下の政府機関の「透明性」の程度にかかわる事柄であると考えた方がよい。
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