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2010-11-13 00:00
危険な「時勢」に対して、あえて異を唱えておきたい
吉田 重信
吉田重信
日本人は真面目な国民である。学校では、先生たちが「真面目に一生懸命に勉強して、人に褒められるような、まともな人間になりなさい」と、寺子屋時代から今日まで、教育しているらしい。このような日本人の国民性は、確かに日本の近代化や発展には寄与してきた。しかし、その国民性は、度が過ぎて硬直的になると、国を誤らせる結果ともなりかねない。戦争体制下を思い出せば、それは明らかだ。「真面目」な考え方だけでは、物事を広い視野でとらえることができないからである。日本の旧軍隊は「真面目な兵隊さん」ばかりで、「真面目」に国の命令に従って、中国を侵略し、アメリカとも戦った。「真面目」な国民は、これをこぞって支持した。見当はずれの誤った「真面目」さもあるのだ。
結果は、惨憺たる敗北であった。日本人の「真面目」さが国を危うくした事例の典型である。ただし、「不真面目」な考え方をする日本人は、例外的に、わずかながら、いることはいた。戦争中、石橋湛山は「満州などを放棄すべし」と説いた。清澤烈は軽井沢にこもって、ゴルフに興じつつ、太平洋戦争で日本は負けると予測し、むしろ「早く負けた方がよい」などと日記に書いた。白州次郎は東京が爆撃されることを想定して、当時の農村部である鶴川の「山荘」に引っ越した。「武相荘(ぶあいそう)」という人を食ったような名前を付け、英国製の高級車の手入れなどをして、遊んでいた。当時そうした人々は「不真面目な非国民」と批判されたが、今にして思えば、国際情勢を驚くべき的確さで判断する先見の明を示していたのである。
昨今、尖閣列島問題をめぐる日中間のあつれきについても、日本国民の反応は、一律に「真面目」である。私には、そのことが、むしろ気になる。政治家や言論人たちの中には、「日本は、中国に対抗して、早く憲法を改正し、核武装をふくめて、軍備を一段と強化すべし」などと説く者が急増している。このように説く人々は、実は、自衛隊や防衛産業の利益を代弁しているだけで、多くの国民の平和への願いを無視する「不真面目」なひとたちではないか、と疑いたくなる。国民は騙されてはならない。経済の不況にかこつけて、軍需産業で荒稼ぎを考えている輩が隠れていそうだ。
「日中関係の重要性に鑑みれば、小さな無人島の領有権などという問題は、どうでもよい」と、一見「不真面目」そうであるが、正鵠を得た発言をする人が存在してもよいのではなかろうか。右翼や右派言論人たち、場合によっては「常識人」やマスコミからも、袋叩きにあうかもしれないが、あえて「時勢」に逆らって指摘しておきたい。いわれている「中国の拡張戦略」に迎合するつもりは毛頭ないが、しかし、それでは、ちっぽけな無人の群島のために、あらゆる意味で落ち目にある日本が、中国を相手に戦争でもやればいいのか?声の大きい者たちがつねに正しい、とは限らない。声は小さくても、ときには、「売国奴」呼ばわりされようとも、危険な「時勢」に対して、あえて異を唱えておきたい。
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