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2010-11-13 00:00
(連載)新興経済諸国(とくに中露)との関係を再考せよ(2)
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
19世紀に日本の明治政府が西洋列強に「不平等条約」の改正を要請した際に、日本の法制度が未整備なために自国民の人権が侵害されかねないとの懸念から、列強は日本の要請を拒否した。明治政府が日本は充分に「文明化」されたと西洋列強を説得して初めて、日本は条約を改正できた。外国企業にとって、現在の中国の政治環境は、徳川時代や明治初期の日本より酷いものである。
相互依存を主張する者達は「中国とロシアの体制がどうあろうと、対話によって良好な関係を築ける」と主張するが、両国とも、我々の自由主義世界秩序を自国に有利なように利用しているだけである。中国の資本家達は共産党と緊密に連携して、アメリカ、ヨーロッパ、日本の戦略産業を買い取って、知識を海賊利用し、世界経済の支配を目論んでいる。ロシアの新興財閥資本家たちはサウス・ケンジントンの高級マンションを買い漁った。そうした場所はFSBの工作員がロンドンで身を潜めるには好都合で、それがアレクサンドル・リトビネンコ氏の暗殺にもつながった。権威主義的な政府と特権的な企業との緊密な協力関係を通じて、両国とも経済成長の成果を軍拡につぎ込んで、自由諸国の安全を脅やしている。
バブル期に日本企業がニューヨークのロックフェラー・センターを買い取って、アメリカ人の不興をかったことがあった。確かに、こうしたシャイロックさながらの行為への嫌悪感は理解できるが、「誰もロックフェラー・センターをどこにも持ってゆくことはできない」ので、日本企業のやったことは何の脅威にもならなかった。しかし中国とロシアの資本家達が、西側の自由な資本主義に公然と異議を唱えているのは、同日に論ずるわけにはゆかない。体制のあり方と大国間の競合の他にも、ナショナリズムが問題となる。1990年代に東南アジア諸国が「アジア的価値観」を唱えて、自国に残っている家父長制的な権威主義政治を正当化しようとした。当時の経済好況を背景に自信を強めていた東南アジア諸国は、欧米の優位に反旗を翻すようになった。しかし、アジア通貨危機以後の東南アジア諸国は、そのような「アジア的価値観」を高らかに主張することは、もはやなくなった。
経済的側面で新興経済諸国を語る際には、低賃金労働による競争力の優位だけが問題なのではない。HSBC銀行のスティーブン・キング主任エコノミストは「西側諸国と新興経済諸国の間で、希少資源の争奪が激化するであろう」と警告している。生活水準の向上と需要の増大を背景に、天然資源の価格設定で新興経済諸国の影響力は増大するであろう。グローバル化によって世界経済全体は成長するものの、新興経済諸国の低賃金の下請業務によって、西側の消費者は将来への展望を持てなくなっている。自由市場経済には、第二次世界大戦前のような資源争奪戦を回避するための自動的安定装置の役割が期待されているが、ロシアと中国の専制政治家達は自国の経済成長を高めるだけのために資本主義を利用し、自分達の政治的な立場を強化しようとしている。実際に、中国は10月に日本との間で尖閣沖紛争が勃発すると、日本ばかりか世界各国へのレアアース資源の輸出停止を表明した。(つづく)
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