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2010-11-25 00:00
砲撃事件でとりあえず政権の危機を乗り切った菅首相
杉浦 正章
政治評論家
死者が出ているのに、北朝鮮の砲撃を民主党幹部が、不謹慎にも「神風」とか「天佑」と述べているというが、いくら永田町でもお粗末だ。しかし、実態的には、この砲撃がいきり立った野党に水を差したことも確かだ。11月26日に補正予算が成立して、たとえ野党が官房長官・仙谷由人と国交相・馬淵澄夫の問責決議案を参院で成立させても、国会は空転のまま12月3日の閉幕を迎える可能性が高い。与野党が雌雄を決するのは、来年1月の通常国会冒頭からとなろう。
影で高笑いしているのが、民主党元代表・小沢一郎だろう。小沢は先週連日のように支持議員を集めて会合を持ち、気勢を上げている。24日も夜20人を集めて会合を開いた。その狙いには、終盤国会にかけての国会招致を回避し、末期症状の菅に代わって政権を狙う、という両側面がある。野党は、本来なら菅政権のていたらくと小沢招致をからめて追い込む予定だったが、砲撃が問題の在りかを外した。「政治とカネ」の集中審議を26日に予定しているが、小沢を呼ぶわけではない。小沢はほおかむりをし続ければ、すぐに会期末だ。もっとも問題は事実上棚上げされるだけであり、強制起訴を受けての通常国会は小沢にとって“火責め、水責め”の場となろう。
一方で、砲撃は沈んでいた菅を元気にさせた。最優先すべき“仕事”が転がり込んだからである。渋っていた党首会談も、閣僚失言や「政治とカネ」でなく、焦眉の急の課題で開催できた。スポーツ新聞や民放テレビが、菅バッシングの波に乗って「砲撃後の対応が遅い」とばかの一つ覚えのような難癖をつけているが、筆者は、最初から動きを見ていたが、総じて菅の対応は悪いものではなかった。マスコミの編集局のスピードを求めても、無理だ。野党も重箱の隅をつつくべきではない。政権にとって最大の収穫は、補正予算成立のめどが一挙に立ったということだろう。自民党が補正前の問責採決を渋る公明党に配慮せざるを得なかったからだ。
自民党は、補正が成立する26日に仙谷と馬淵の問責決議案を上程する予定で、野党の賛成多数で可決される公算が高い。そうなれば柳田稔の法相辞任に次ぐ、仙谷、馬淵の辞任問題が俎上(そじょう)に登る。しかし、菅にとって政権直撃となる両者の辞任、とりわけ仙谷の辞任だけは、何としてでも回避せざるを得まい。菅は、問責決議案が可決されても罷免をしない方向だ。国会は当然空転するだろうが、空転のまま会期切れとなる可能性が高い。したがって菅政権を揺さぶる課題は、すべて棚上げ状態のままとなり、決着の場は通常国会冒頭からとなるだろう。
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