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2010-12-01 00:00
(連載)米中間選挙の結果を分析する(1)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
今次中間選挙における民主党の敗北の決定的な要因は、オバマ大統領を誕生させた無党派層が、今回の中間選挙で共和党候補に投票したことにある。さらにオバマ陣営を支えた若者層が、政権発足後、急速にオバマ離れをした。どうしてオバマ大統領は最大の支持層を失ったのか。リベラル派などオバマ大統領を支持したグループは、「オバマ大統領があまりにもやらなかった(do too little)」と考えて反発したのに対して、保守派の人々は「オバマ大統領はやり過ぎた(do too much)」ことを理由に批判の矛先を向けたのである。
オバマ大統領は2年足らずの期間のうちに幾つかの重要法案を仕上げたと国民に訴えた。すなわち、史上最大の景気刺激策、医療保険制度改革、金融規制改革である。だが、それらは穏健な保守層にも大きな不安を与えることになった。多くの国民は、景気刺激策は巨額の財政赤字を生み出し、医療保険制度改革も政府の肥大化を招く懸念があり、金融規制改革も本当に金融機関を規制する気があるのか疑わしいと感じていた。中産階級の無党派層にとって、いずれも受け入れがたい政策であった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の出口調査では、無党派の55%が共和党、40%が民主党に投票しており、「大量の無党派層の共和党へのシフトが、2年前に死にかかっていた共和党を蘇らせた」と指摘している。2006年の選挙では無党派層の57%が民主党候補に投票し、共和党候補に行った票は39%に過ぎなかった。日本同様、アメリカでも、政党離れが顕著で、選挙結果は無党派層の動向で決まる傾向が強くなっている。明らかに民主党は無党派層にソッポを向かれたのである。
保守派や無党派にエネルギーを与えたのが、ティー・パーティ運動である。彼らの主張は特に目新しいものではない。政府の肥大化を嫌い、「小さな政府」の実現を目指すことである。また国民の権利は憲法によって保障されており、議会も政府もそれを犯すことは許されないと主張し、医療保険制度改革は国民の選ぶ権利を侵害するものであると、その廃棄を求めている。13州の司法長官が、既に違憲訴訟を起こしている。またオバマ政権のもとで膨れあがる財政赤字に危機感を抱き、歳出削減を求めている。いわばティー・パーティ運動は自然発生的に生まれた草の根運動で、財政保守主義の立場からオバマ政権を批判している。それが自信をなくしていた共和党に力強いロジックを与え、多くの国民の共感を呼んだといえる。
現在、アメリカでは、“リベラル”という言葉は悪い意味で使われることが多く、”big government, big spender”を連想する言葉になっている。ティー・パーティ運動は、オバマ政権にそうしたイメージを与えることに成功したのである。ただ、同運動が支持した候補者が全員当選したわけではない。たとえば、同運動が最大の敵と位置づけていたネバダ州の現職のリード民主党上院院内総務は、ティー・パーティ運動の候補者を破って、再選を果たしている。(つづく)
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