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2010-12-08 00:00
役者が小粒すぎる「大連立」話
杉浦正章
政治評論家
永田町に夜な夜な大連立という幽霊が現れる。救国内閣を作るのだという。しかし幽霊は幽霊であって、足がないから、地に着いていない。首相・菅直人は社民党との数合わせに必死で、大連立という回天の大事業を行える情況を意識しているとは思えない。唯一の大連立への道は、菅が小沢一郎を切って、政権過半数割れも辞さぬ動きで問題提起できるかどうかだが、まず無理だろう。だいいち役者が小粒すぎる。2007年の大連立騒動は、代表・小沢一郎と総裁・福田康夫の間で生じた話だから、すごみがあった。今回は出番なしで不遇をかこつ、たちあがれ日本共同代表の与謝野馨や、反小沢の権化・野中広務辺りが火元とあっては、ますます怪しい。
与謝野は碁仲間である小沢と菅の両方に接近して、出番を模索している。月末にも碁で小沢と対局するが、与謝野の発言を分析すると、どうも小沢を軸に大連立を考えているわけではないような気がする。かってエコノミストとのインタビューで「我々としては自民党や民主党の健全な勢力と一緒になって、本当の意味で健全な政党をつくりたいと考えています」と本音を漏らしている。「健全な勢力」とは「非小沢勢力」に他ならない。小沢を軸にしては、なるものもならないと感じている証拠だ。与謝野は自らの提唱した財政健全化策に菅が乗ってきたことをテーマに再編をしたいと考えているようだ。一方、野中はテレビ番組で「菅さんは小沢君が出て行ったら大変だと思っているようだが、邪道を歩く親が出て行っても、子は動かない。それほどの数はついていかない」と述べ、自らの大連立の動きの一端を垣間見せている。与謝野と同じように、小沢を切り捨て、菅が非小沢勢力をまとめて、自民党と大連立する構想だ。確かに大連立という幽霊の正体を見極めれば、浅薄なメデイアが伝えるように小沢を軸にすることはあり得ない。野中の言うように、いくら政治を知らないチルドレンでも、小沢についていって新党を作っても、次の選挙で落選の憂き目に遭うぐらいのことは分かるだろう。
「集団自殺」になるのだ。したがって小沢には代表選で獲得した衆参200人がまるまるついていくことはあり得ない。せいぜいか50人か60人、最大限いって100人程度だろう。それでも衆院の過半数241人には足りなくなる可能性がある。そこに大連立がささやかれる根拠があるのだ。問題は、菅と幹事長・岡田克也に「小沢切り」の腹が据わっているかどうかだ。今後小沢の強制起訴、通常国会での小沢招致と続く「小沢問題」が、「小沢切り」の動機となる可能性は十分ある。しかし「小沢切り」をした場合、自民党が「はい、はい」とばかりに連立に応じるかは疑問だ。公明党ですら統一地方選挙を前にイメージダウンの「泥舟」に乗るとは思えない。むしろ自民、公明両党とも、ここを先途と解散に追い込もうとするだろう。自民党にしてみれば、政党支持率が民主党と逆転したいまこそ、政権奪回のチャンスと位置づけるだろう。小泉純一郎が「大連立には応じるべきではない」と言う背景には、その読みがある。
第一、1議席を争う小選挙区制において大連立という「共通の目標」を掲げて2大政党がしのぎを削ることはあり得ない。したがって、解散前の大連立は成立しない。みんなの党の渡辺喜美が解散前に大連立すれば、「100人立てて躍進する」と意気込んでいる。それでは、大連立のケースはどのような場合が想定されるのだろうか。戦争や、大恐慌のような外的要因が政党間の争いをストップさせる場合がまず挙げられる。これこそ挙国一致救国内閣だが、まだ海のものとも、山のものともつかない。次に総選挙で自民、民主両党がいずれも過半数を割り込んだ場合だが、この場合も自民党は、公明党やみんなの党との連立を狙うだろうし、民主党も公明党を抱き込んだ方が手っ取り早い。もっとも消費税のような重要政策を軸に部分連合的な大連立が一時的に成立する可能性は否定できない。いずれにせよ幽霊に足が生えるのは容易ではない。
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