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2010-12-13 00:00
王偉彬教授の「共生体」論への疑問
河村 洋
NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
12月9日付けの王偉彬先生の本欄への投稿「日中両国は『敵味方』ではなく、『共生体』を志向せよ」を読ませていただきました。貴重な提言に啓発されました。ただ、以下の二点から、寄稿文が情緒的に思われました。
第一には、「共同体」と「共生体」の違いがはっきりしません。王先生が言われる「共生体」とは、どのようなものなのでしょうか?加盟国の「多様性を認める」と記されているので、ASEANを念頭に置いているのでしょうか?しかし、現実には、中国は東アジア地域と全世界の民主国家にとって安全保障上の脅威となっているのです。とすれば、ASEANはモデルにならないでしょう。むしろ、対立国同士の安全弁として、ロシアとEUおよびNATOとの間に設けられている定期的な東西対話の方が、日中間のチャンネルには相応しく思えます。実際に、私は、古森義久氏のブログに「日本と中国が同じ東アジア共同体に入るのは、ロシアをEUおよびNATOに加盟させるようなものだ」とコメントしたことがあります。古森氏も、私のコメントに同意されました。王先生が主張される「共生体」とは、このロシアと欧米の間にある「安全弁」に近いものと解釈してよろしいのでしょうか?「共生体」と「共同体」の違いが明確に語られていないので、私には「言葉の遊び」に思われました。ただ、鳩山前首相の「共同体」構想も物議を醸したわりには、具体的にどの分野でどのような統合を目指すのかが不明確でした。そうした事情から、この件は致し方ないかもしれません。
第二に、「中国もインドも同じだ」と中国異質論の本質を軽視するような王先生の議論です。劉曉波氏のノーベル平和賞授与が報道される昨今、どうして王先生が言われるような議論が通用するのでしょうか?私は文化の多様性は認めます。どの国でも深く付き合えば衝突はあります。日本がインドとも深く付き合えば、衝突はあり得ます。しかし「民主国家」のインドが劉曉波氏のような人物を抑圧するでしょうか?ちなみに、明治以来の日本が様々な分野で深く付き合ってきたアメリカやイギリスとは、多くの衝突がありました。だからと言って、「民主国家」の日本人が「アメリカ異質論」や「イギリス異質論」を声高に叫んだでしょうか?ここまで言えば、中国異質論の本質など語らずして自ずとわかってきます。
上記の2点から、現在の対中警戒論は、太平洋戦争期の鬼畜米英論と同一視できません。現在の日本人は、偏狭なナショナリズムからではなく、グローバル・スタンダードの観点から中国を批判しているのです。最後に、私の対中観については『百花斉放』の本年9月29日、11月13日(連載)、および『百家争鳴』の本年8月2日(連載)の投稿を参照していただければ、喜ばしく思います。
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