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2010-12-18 00:00
(連載)忍び寄る米帝国の衰退と日本の選択(2)
吉田 重信
中国研究家
日本にとっての選択肢はつぎの4通りほどしかない、と筆者は考える。第一は、当時のギリシャがローマ帝国の盟友として、ローマ帝国とともに衰退する運命をたどったように、日本も引き続き米国の下僕として、アメリカ合衆国の飛び地の一州であるかのように、米国に盲従しながら、ともに衰退していく道である。外交的に身を処することに失敗したギリシャは、やがてはイスラム勢力たるトルコと、そして近世以降はゲルマン民族から派生した大英帝国の支配下に置かれることになった。「ギリシャの悲劇」は、近年、その国の経済破綻というかたちで、いまもなお尾をひいている。
第二は、新興勢力たる中国と連携することによって、国家の安寧をはかる道である。中国は、「帝政ロシア」の再興としてのロシアと旧「中ソ同盟」のようなものを復活させて、これと提携関係を深めようとしている。しかし、これには、多数の内部矛盾をかかえた中国がいつまで存続するかという予測不能な根本問題があることを忘れるべきではない。ソ連体制も成立後70年あまりしか存続しなかった。
第三は、日本が、核武装を含む重武装をして、日米中三極体制の一極を担う形で、力の外交を行う道である。これは、かつて米ソ間にあって独自路線を標榜した仏のドゴール大統領の路線を倣うものであるが、この選択は、理論的にはあり得ても、実際には米国がこれを許容せず、また、そのリスクとコストを担う用意が国民になく、選択肢としての現実性はない。
第四は、日本が、アジア太平洋情勢の安定化に資する「平和構想」の構築を目指して、イニシアティブをとる道である。米中間にあって軍事力に頼ることのできない弱者日本としては、この道こそが、現実的で賢明な道であると考えられる。菅内閣が、日本経済の低迷にかこつけて、あるいは北朝鮮の脅威を奇貨として、また尖閣諸島をめぐる中国とのゴタゴタに便乗して、軍備の増強や「武器輸出三原則の見直し」などと言いながら、軍需産業に力を入れるなどは、もってのほかである。いずれにせよ、日本の政治的指導者と国民は、厳しい歴史的選択を迫られている。目先の利害や感情だけを考えて、呪文のように「日米同盟唯一絶対」論を唱えている時ではない。(おわり)
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