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2010-12-21 00:00
台頭する「証人喚問」論で、小沢いっそう窮地に
杉浦 正章
政治評論家
にわかに「小沢証人喚問」論が政権内と新聞論調にに台頭してきた。証人喚問であれば、法的拘束力のない政治倫理審査会と異なり、決定すれば出席を強制され、虚偽の証言は偽証罪に問われる。野党の主張に首相・菅直人が乗ることになるが、喚問実施で小沢が離党すれば、通常国会における野党との連携を視野に入れることも可能となる。小沢は予想以上の菅の“反撃”に顔色なしのように見える。菅と小沢一郎の2人だけの90分間の会談で、表に出て来ているのは「政倫審出席せよ」対「出席しない」と「政治とカネが悪い」対「政権運営が悪い」の2点に集約される。トップ同士の話し合いにしては、低次元すぎるから、例えば「内閣改造論」などが出た可能性はあるが、現段階では「決裂」だけが前面に出ている。それも、政権内部と党側から「こうなったら証人喚問しかない」という先鋭的な主張が、高まってきているのだ。
もともと証人喚問は、野党側の主張である。12月20日も自民党副総裁・大島理森が「小沢氏が出席しないと言っている以上、政倫審は無意味。証人喚問すべきだ」と主張、公明党も「本人が出ないと明言している。むしろ証人喚問という野党の主張している道の可能性も出てくる」(代表・山口那津男)という立場だ。菅にとって見れば、会談が決裂した以上は、捨てておけば「離党勧告」→「除名処分」の路線に直結しかねない側面がある。党分裂をも意識した決断が必要になる。しかし、証人喚問なら、自ら直接的な決断をすることなく、ワンクッション置いて小沢を窮地に、場合によっては離党に追い込める。いわば野党と連携の「小沢切り」となる。加えて「政治とカネ」で野党との「クリーン連携」の“実績”を作ることが出来るのだ。
まさに一石二鳥の妙手として登場してきたことになる。与野党連立または大連立への布石にもなるという読みもあるかも知れない。一方、小沢側には、両院議員総会や党分裂のカードで脅しをかければ、菅も折れざるを得ないとの判断があった。しかし会談では、小沢が「相当感情的だった」と漏らすほど“イラ菅”ぶりが発揮され、小沢の判断は誤算に終わった。支持率急落で崖っぷちに立った菅にしてみれば、窮鼠猫を噛む「小沢切り」しか、政権浮揚策はなく、必死に歯をむいたのである。小沢の主張には常に生かじりの法律論が登場するが、近く強制起訴され裁判が始まることを逆手に取った出席拒否の主張は、その最たるものだ。国会議員は法的責任に加えて、重い政治的・道義的責任を背負っていることなど眼中にない。古くは吉田茂が証人喚問されたのを始め、中曽根康弘や竹下登も喚問に応じて、説明責任を果たしている。
小沢だけが、秘書が3人も逮捕されたゼネコン疑惑に加えて、血税である旧新生党の資金を4億5千万円も支持グループにばらまいておきながら、逃げまくる“わがまま”を押し通せるわけがない。菅が証人喚問で最終決断をすれば、小沢は政倫審出席拒否というやぶをつついてヘビを出した結果となる。小沢をバックアップする支持グループも、農水政務官・松木謙公らが「小沢さんが離党すればついていく」と威勢がいいが、“親分”の危急存亡の時に、親小沢の中核「一新会」の20日の会合には、たった12人しか集まらなかった。選挙区からかなり圧力がかかり始めたのだろう。折から新聞論調も、読売が社説で「実現には証人喚問しかない」、朝日も社説で「小沢氏があくまで出ないという以上は、法的拘束力のある証人喚問を実現しなければなるまい」と喚問要求で一致した。民主党執行部は27日の役員会で対応を協議するが、たとえ証人喚問を決めても、年内は日取りがなく、最終決着は越年せざるを得まい。
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