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2010-12-22 00:00
NPTに拘らず、日印原子力協力を推進せよ
吉田 康彦
大阪経済法科大学客員教授
畏友・野口邦和氏が日印原子力協定に疑問を呈している。確かにNPT(核不拡散条約)体制を核廃絶に導く規範と見なすなら、NPT非加盟のインドに協力するなど、狂気の沙汰ということになる。NPT体制堅持と強化を推進してきたブッシュ前政権が、終始一貫してNPTに批判的だったインドとの協力に転じたのは、政治・外交的には、急速に影響力を強める中国に対するけん制と封じ込め、経済的には軽水炉輸出を通して国内原子力産業に活路を開くためだった。
独自の核開発により核保有の道を歩んだインドは、同じ道を選んだパキスタンとともに、米主導のNPT体制から締め出され、NPT信仰の強い日本の常識からすれば、イラン、北朝鮮とともに国際社会の異端児ということになるが、世界最古の民主主義国を自認するインドからすれば、核保有国に核廃棄を求めないNPTは現存する最大の不平等条約であり、「NPTは核のアパルトヘイト(差別)」ということになる。インドはNPT未加盟国ではない。確信犯としての非加盟国だ。NPTが存在する限り、インドが加盟することはあり得ない。
そもそもインドこそは、核廃絶の最初の提唱国だったのだ。インドが独自の核開発に踏み切ったのは、2度にわたる隣国中国との国境紛争の結果、インド軍が手痛い敗北を喫したことにあった。折しも米国主導で締結されたNPTは核保有国の核を既成事実として容認し、非核保有国との差別を際立たせ、固定化したのだ。それでもインドは自国の核は厳重に管理し、隣国パキスタンのように「核の闇市場」などには手を染めず、核拡散には一切関与しなかった。
その点は、ブッシュ政権も事前に十分調査し、拡散の“前科”がないことを確認した上で、原子力器材の輸出自粛を申し合わせたロンドン・ガイドラインの改定に踏み切ったのだ。つまり、核保有国の特権を容認したNPTを規範にして廃絶を説くのは、間違いだ。核保有の現状固定を前提にしているかぎり、NPTをいくら忠実に守っても、世界が核廃絶の道を歩むことにはならないからだ。NPTは核保有国に対しては、IAEA(国際原子力機関)の査察を義務づけていない。極端にいえば、核保有国はいくらでも秘密開発ができることになる。保有核の申告すら義務づけられていない。条約上の差別を解消する動きは存在したが、保有国の特権保持の思惑の方が強く、現時点で差別は解消していない。
結論として、日本がインドに協力せず、原子炉輸出に反対すれば、韓国、ロシア、フランスなどの他のライバル輸出国が漁夫の利を得て大もうけをするだけのことだ。2年前の洞爺湖サミット(主要国首脳会議)は、温暖化防止のために原子力推進で参加国の意見が一致したことを付け加えておこう。席上、反原発の連立与党・社会党に配慮して唯一態度を保留したドイツも、その後は推進の立場に戻っている。
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