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2010-12-27 00:00
米上院の新START批准承認を歓迎する
堂之脇 光朗
日本紛争予防センター理事長
12月22日に米上院は野党共和党議員13名を含む賛成71で、反対の26を圧し、米ロ間の新START(戦略兵器削減条約)の批准を承認した。オバマ大統領の民主党は11月の中間選挙で下院では共和党に逆転され、上院でも議席差が縮まり、共和党が「新STARTの審議は年明けの新議会で」と言い出したので、批准の見通しはきわめて困難となっていた。そこでオバマ大統領以下バイデン副大統領、クリントン国務長官などが総力をあげて共和党上院議員の説得につとめた。今後10年間で800億ドルの支出を約束していた核兵器近代化予算をさらに50億ドル増額し、条約文面の改訂を必要としない付帯決議も受け入れるなどとして、必要とされる3分の2以上の賛成を確保し、批准承認にこぎつけた。これはオバマ政権にとり画期的な外交的成果と言ってよい。
仮に議決が新議会に持ち越され、条約の批准の見通しが立たなくなるとしたら、一昨年4月のプラハ演説で幕開けした「核なき世界」へ向けての動きは、本年4月の米政府による「核政策見直し」の発表、ワシントンでの「核セキュリティー・サミット」の開催、そして5月のNPT運用検討会議での「行動計画」を含む最終文書採択にもかかわらず、最終的には挫折を余儀なくされたであろう。核軍縮の前進のために、折角開かれた「機会の窓(Window of opportunity)」が僅か2年足らずで閉ざされる可能性は少なくなかったのである。
米上院による批准承認により得られるものは多々ある。先ず、1年前のSTARTⅠ条約の失効により停止されていた米ロ両国による戦略核兵器施設の相互査察が再開され、核軍縮分野での米ロ両国間の相互信頼、協力関係が修復される。これが核軍縮に向けての国際的努力に好影響を及ぼすことは言うまでもない。それに加えて、新STARTの批准が先送りとなれば絶望的とみられていたCTBT(包括的核実験禁止条約)の米上院による批准承認も、議席差は縮まったとはいえ、今回と同様な超党派の努力により達成される余地が残されることとなった。
さらに好ましいことに、本年8月9日のこの欄の拙稿でも述べたように、新STARTの柱の一つである戦略弾道ミサイルの弾頭に通常兵器を搭載する「即時地球規模攻撃(Prompt Global Strike)能力」についても、当初は強く反対していたロシアも、中国も、強い関心を示しはじめているとのことである(ハドソン研究所のクリストファー・フォード研究員の12月19日付論文)。換言すれば米国以外の核兵器大国の間でも、核兵器への依存度を減らす傾向が看取されるようになってきた。
先般の中間選挙でオバマ大統領の民主党が大敗したので、2012年の選挙での同大統領の再選は危ういとの見方もあるが、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授も指摘しているように、2年後も共和党のサラ・ペイリン元アラスカ州知事などのボストン・ティー・パーティー勢力が優勢とは限らないであろう。他方、オバマ大統領の「核なき世界」政策は国際的にも支持が多いことから、一時は閉ざされるかに見えた「機会の窓」が、今後2年と云わず数年間は開いたままである可能性も出てきたように思われる。
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