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2011-01-21 00:00
岐路に立つアメリカ社会:分裂か、団結か?
川上 高司
拓殖大学教授
1月8日、アメリカのアリゾナ州では下院議員のガブリエル・ギフォード女史が22歳の男性に狙撃されたものの、かろうじて一命をとりとめたが、9歳の少女を含む6人が巻き添えで犠牲になり、13人が負傷する、という大惨事が起こった。
ギフォード議員は、オバマ大統領の医療制度を支持して賛成票を投じた民主党議員の1人である。さらには、胚性幹細胞の研究を支持し、中絶の権利も支持していた。昨年の中間選挙では、ティー・パーティの立候補者と激しく争って、議席を獲得した、いわば、アメリカ保守派にとっては「目の敵」ともいえる。元アラスカ州知事でティー・パーティの顔ともいえるサラ・ペイリンは、自ら「gun site targets」という標的地図を作成し、20人の民主党下院議員の氏名を挙げ、「20議席を取り返そう」と、まるで彼らを標的とするかのようにネットで呼びかけていた。そのリストの中にギフォード議員も含まれている。22歳の青年が、この呼びかけに触発されたかどうかはわからないが、わざわざギフォード議員に近づき、頭を撃ったというから、暗殺の意図ははっきりしている。
FBIは「政治的な背景があるのでは」と捜査を開始し、アメリカ議会は開会を延期するなど、今回の襲撃事件がアメリカ社会に与えた衝撃は大きい。ペイリン側は、ギフォード襲撃事件と自分の作成した標的サイトとは「関係ない」と突っぱねているが、ペイリンの政治生命が致命的なダメージを受けたことは間違いない。アメリカ保守派の代表は、「共和党も、民主党も、保守も、リベラルもない。我々は皆アメリカ人だ。社会を分裂させようとする、このような暴力が起こった時こそ、一層団結しなければならない」と呼びかけて、いま一度「団結」を強調している。
今回の襲撃事件は、オバマ大統領就任後のアメリカ社会の政治的、社会的分裂の深さを如実に示した。かつて、オバマは「一つのアメリカ」を呼びかけて大統領に就任したが、皮肉なことに、かえって社会の分裂が進んだ。それからわずか2年、今は真の「一つのアメリカ」が問われている。
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