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2011-01-27 00:00
“本音”見えた朝日の早期解散反対論
杉浦 正章
政治評論家
油を引いたフライパンに水滴を入れたように、解散論議がはじけ飛んだ。自民対民主の解散綱引きの開始である。自民党総裁・谷垣禎一が何と7回にわたり解散・総選挙を要求。「解散」の言葉は13回使ったという。首相・菅直人は解散に関しては語気を強めて否定した。国会冒頭は5分5分の対決だが、内閣の命運をかけた菅と、総裁としての首がかかった谷垣の肉弾戦の帰趨は、谷垣優勢、菅守勢とみた。菅政権が追い込まれるのは、これからだ。政策など全く分かっていないテレビのコメンテーターが、国会論戦のたびに「政策論争がない」といった反応を示すが、谷垣も政策論争には9割5分を費やしている。内容が地味なため、手っ取り早い政局をクローズアップする、マスコミ自らの習癖を棚に上げた論議だ。その手っ取り早い解散論議で注目される部分は、谷垣が「国民の信を問えば、共に危機を乗り越えることは可能だ」と、税制抜本改革のための与野党協議の前提として、解散・総選挙を主張した点だ。これに対して、菅は「現時点では解散は全く考えていない」とはねつけ、水と油の様相を呈した。
いま解散・総選挙となれば政権奪還も夢ではない自民党と、政権喪失必至の民主党の構図を浮き彫りにした。この谷垣の発言だけをとらえて、朝日は1月27日付の社説で「『解散が条件』理はあるか」と銘打って、早期解散反対論を展開している。そのさわりは「前回の総選挙から1年半にもならず」「頻繁な国政選挙は政治に深刻な副作用をもたらす」「有権者が判断するには一定の期間が必要だ」という点にある。いよいよ、自民党政権には戻したくないという“本音”があらわになった論調だ。しかし、この社説は我田引水の思惑がありありと出ていて、論理破綻をきたしている。なぜなら谷垣の主張は、社説が指摘する与野党政策協議だけが前提でなく、民主党政権の「体たらく」全体を前提にしていることを忘れているか、あえて無視しているからだ。
解散要求の根拠は、「政治とカネ」の小沢一郎を前に為す術のない執行部、臆面もないマニフェスト修正論議、与謝野人事が象徴する政権の変節、二代にわたる首相のリーダーシップ欠如、普天間移転の泥沼化など、まさに「辟易とする政権の有様」を前提にしているのだ。もともと衆院解散は、2年前後で危険水域というのが常識であり、吉田内閣では半年で解散といった事態もある。政治家の発言は全体をとらえなければならない。社説のいう「深刻な副作用」は既に政権の側にあり、解散で総選挙の洗礼を受ける理由は十二分にある。菅の答弁は、解散拒否だけは威勢がよかったが、総じて元気がなく、官僚の資料読み上げスタイルが継続された。解散論議の先を展望すると、菅が強気であるのは、通常国会冒頭だけであったことが次第に鮮明になるだろう。なぜなら、野党にとってはこれほど追求しやすい材料が山積している政権はまれだし、菅にとってはこの“外敵”だけでなく、“内憂”があまりにも大きく、抜き差しならぬ兆候を見せているからである。
菅は次第に弱ってゆくのが流れである。小沢の強制起訴を間近にして当面鳴りをひそめている小沢グループも、菅の消費税“独走”、マニフェスト修正、与謝野人事などで不満が鬱積しており、いつ爆発して「菅降ろし」が始まるか分からない。このように「前門の虎、後門の狼」という状態で政権が立ち往生するケースがたびたび発生するだろう。国会審議は、各駅停車のローカル線で遅々として進まず、なりふり構わぬ野党は予算関連法案を人質に取ることも辞さないだろう。「やぶれかぶれ解散」「話し合い解散」「内閣総辞職で選挙管理内閣組閣・解散総選挙」といった事態がささやかれるのは、無理もない状況にある。それにつけても、菅が、単なる変節漢にしかみえない与謝野を「三顧の礼で迎えた」と、不世出の戦略家・諸葛孔明に例えたのには驚いた。歴史を知らない用語だが、ひな壇の与謝野はニヤッと笑みを浮かべた。菅は、民主党分裂で「自民党」「小沢新党」「民主党」の天下三分の計でも授けてもらいたいのだろうか。
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