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2011-02-02 00:00
(連載)日本列島に蔓延する悲観論を排す(2)
吉田 重信
中国研究家
これに対し、日本のような柔構造を欠き、硬直した体制下にある中国、ロシア、北朝鮮の国家体制の方こそが、脆弱で、後進性を脱していないのである。北朝鮮の体制は、いつ崩壊してもおかしくない。中国の「発展」でさえも、見かけはともかく、今後いつまで継続するかは疑問である。さらに、彼らの指導者は、国民生活を犠牲にして、結局は資源の浪費につらなる、軍備増強に励むという愚擧を犯している。このような中国や北朝鮮の体制が長く存続するはずがない。日本は、かつてアジア太平洋戦争において犯した愚挙を再び繰り返してはならない。むしろ、平和憲法を含むこれまでの日本の実績と蓄積を背景にして、奢りではなく、適切な自信と余裕をもって、現下の情勢を冷静に見極め、知恵を発揮することが期待されている。冷静さを失い、無責任な「世論」に煽られて愚策に走ってはならない。
むしろ、険悪化する恐れのあるアシア太平洋情勢において、地域的平和構築へのイニシアティブをとることができるのは、日本をおいてほかにないと考える。なぜなら、日本は平和憲法に裏付けられた平和外交や沖縄・長崎の原爆体験に基づく平和運動などの実績があるからである。今こそ、日本には「国難」どころか、絶好の「平和へのチャンス」が到来したのである。この平和構築へのイニシアティブは、各種の地域的不戦条約とか、非武装地帯構想のほか、軍備増強に充てる費用に代えて、ODA予算の拡充や文化的、人的交流のための費用を拡充することを含む。とくに後者の措置は、地域の繁栄と友好関係の増進に役立つであろう。これらの措置によって、米中二強大国の意向が中心となって左右される、今後の国際情勢において、日本が発言力を強めることが可能となる。米国へ追随するだけでは、日本の発言力は低下する一方である。
日本の前途は、今後大きな誤りを犯さないかぎり、開けている。成熟した先進国である日本が競争相手とすべきは、後進国たる中国(中国の一人あたりのGDPは、日本のそれの十分の一に過ぎない)ではなく、むしろドイツ、フランス、英国のような一流の先進諸国である。この点で、日本の基礎的条件は、欧米先進諸国のそれに比べて、決して遜色がない。また、現下の日本の抱える政治、経済的困難も、米国、ドイツ、フランス、英国のような先進諸国と共通する困難でもある。したがって、日本は、これらの先進諸国と連携しながら、共通する課題の解決に専念すればよい。目下日本が抱える最大の課題は、福祉の充実と健全な財政運営を両立させ、より安定した国家発展の基盤を整備することであろう。防衛体制の強化などでは決してないと考える。
さらに望ましい日本の姿は、単に自国の問題を解決し、利益をはかるだけではなく、他国の困難な問題の解決にも支援の手を差し伸べるくらいの余裕があってほしい。たとえば、低開発国たる北朝鮮に対しては、徒に嫌悪、警戒し、孤立させるよりも、その窮状を緩和し、国際社会に引き出すことによって、将来の「南北平和的統一」に資するような積極策を実行していく方が、長期的にみて、朝鮮半島の安定化に資するところが大きいであろう。考えてみれば、北朝鮮の現状は、もとはといえば、日本の朝鮮半島の支配と戦後の冷戦構造がもたらしたものであり、また、北朝鮮こそは、国際情勢の犠牲者なのである。日本は、現下の国際情勢において、消極的、受動的対応ではなく、しっかりした展望と意欲をもって、積極的に対処すれば、将来が開けるであろう。日本の政治家やジャーナリズムは、自信喪失をもたらすような悲観論を徒に煽るのでなく、「将来の夢」を語るべきではなかろうか。(おわり)
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