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2006-08-04 00:00
北朝鮮に踊らされることなく冷静な議論を求めたい
吉田 康彦
大阪経済法科大学客員教授
当初はレバノン情勢を論じるつもりだったが、おりしも久保田友紀さんが「百花斉放」欄に同趣旨の内容を投稿しているので、再び北朝鮮ミサイル発射関連の持論を展開する。私は前回の投稿で、①北朝鮮(以下、「北」と略称)のミサイル発射実験に違法性はなく、日本に対する威嚇ではない。北の念頭には米国しかない。②発射実験はミサイル開発・保有国48カ国にとって日常茶飯事であり、日本がいきなり「制裁」を求めて国連安保理に提訴、決議案提出したのは過剰反応、という2点を指摘したところ、案の定、反論が寄せられた。「吉田先生は北を擁護している」というのだが、およそ見当違いだ。
北は昨年2月10日「核保有宣言」をしたが、私は、北がプルトニウム路線をとりながらいまだに核爆発実験をしておらず(おそらく、したくてもできず)、兵器の小型化も達成できず、今日現在、核弾頭の保有には成功していないと見ている。要するに核兵器を保有していないのだ。これは過去15年、私の一貫した主張である。それが何ゆえに「擁護」なのか。
そもそも今回も私は北のミサイル発射を「擁護」などしていない。しかしミサイル発射が単に「日本の」でなく、「国際の平和と安全に対する脅威」(国連憲章第7章にもとづく制裁発動の要件)であるというなら、日本としては、いかなる国のミサイル発射をも規制し、最終的には禁止する国際条約締結を提唱すべきではないか。対抗措置として、米国製のPAC-3、LM-3を前倒しして自衛隊に配備するよりも、その方が「脅威」を普遍的に除去する方策ではないか。現に、北のミサイル発射5日前にはロシアが核ミサイル発射実験を行っており、日米のミサイル防衛は地域の緊張を高めるばかりだ。
7月15日に全会一致で採択された安保理決議にも、その前段階の日本の「制裁」決議案にも言及されていないが、現行のMTCR(ミサイル関連技術管理レジーム)やHCOC(ハーグ行動規範)の強化、さらに法制化を提案してこそ、核・ミサイル廃棄に向けての日本外交が安保理の場で国際的に注目される好機だったはずだ。北にとっては在日米軍のミサイルが脅威なのであり、双務的な軍縮と緊張緩和の措置が地域の平和をもたらすのだ。冷戦終結後の盧泰愚・韓国大統領の「(韓国領土における)核不在宣言」が、のちの北の寧辺地区の核施設凍結の同意につながったことを想起したい。
核もミサイルも拉致も、北の一挙手一投足は日本国民のマスヒステリーを惹起する。少し冷静になったところで、地域の永続的な平和のために日本が何をすべきか考えて見てはどうか。少なくとも金正日体制を武力で倒すことはできないし、日本の単独制裁は効果なし。それどころか逆効果になり、拉致問題の解明などはますます遠ざかることを知るべきだ。
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