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2011-02-17 00:00
「抑止力は方便」との鳩山元首相発言の真実性
吉田 重信
中国研究家
鳩山元首相の「抑止力は方便であった」との発言が物議を醸している。このような正直きわまる発言をする首相が日本にいたことを、国民は喜ぶべきである。なぜなら、かつての自民党を中心とする政権指導者たちは、日米安保条約の運用について、あまりにも多くのウソを国民につきすぎたからである。その例は、佐藤元首相による沖縄の核についての密約の存在とその後の政府の説明ぶりなど、枚挙につきない。
鳩山氏の発言は真実の一端を語っていると考える。つまり、「米軍の抑止力を維持するうえで、沖縄基地は、不可欠ではない」ということだ。だからこそ、自民党の政治家が鳩山発言を非難し、また、民主党の首相をはじめ閣僚が慌てふためいているのだ。真実は以下のとおりである。
戦略的にみて、米国が有効な抑止力を確保するうえで、沖縄基地は必要不可欠ではないのである。したがって、鳩山氏の「抑止力は(沖縄基地を擁護するための)「方便」であった」との発言は正しい。つまり、アジア太平洋における米国の抑止力の中核は、第七艦隊であり、そのまた中核は、機動性を有する原子力空母とそれに付随する航空兵力および核ミサイル搭載の原子力潜水艦である。これら兵力に対する核関係の機材提供や補修などは、沖縄基地では対応できず、むしろ、ハワイ、アラスカなどの米国大陸本土で行っているのが現状である。また、米軍の沖縄基地は、日常的にありえる航空機墜落事故の発生や実際に沖縄基地が戦闘活動に巻き込まれたなどの際に、発生しうる住民の反対運動の可能性を考えれば、沖縄基地には脆弱性があり、米軍にとっては、拘束なく自由に使えるハワイ、グアムなどを含む本土の基地の方が、より信頼性が高いのである。現在、沖縄の米軍基地の存続に反対している住民の意向を考えれば、米軍にとっての沖縄基地の価値はそれだけ減じているとみるべきである。一たんことが起こったときには、米軍は沖縄基地を自由に使えないからである。米軍は、かつてフィリピン・スベック湾に海軍基地を持っていたが、これを放棄したのは、住民の意向を背景とするフィリピン政府の反対を考慮したからにほかならない。
にもかかわらず、米軍は、なにゆえに沖縄基地の維持に固執して、グアムなどに移転しないのか?答えは、簡単である。それは、鳩山氏が発言しているとおり、沖縄基地が「居心地がよい」からである。つまり、米軍にとって、沖縄基地の有用性は、抑止力確保のためというよりも、むしろ、沖縄基地が、米軍将兵と家族に軍事用語でいうR&R(Rest and Recreation)を提供できる点にある。また、現在の在沖縄の米軍基地に関わる費用は、地主への地代補償のみならず、労務者提供、家族のための住宅建設などの費用一切を日本政府が負担している。したがって、米側からみれば、このような沖縄基地は、米軍が沖縄を占領して以来の「既得権益」であり、これ手放したくないのは当然である。このような見解は、日米安保条約運用の裏面を知る政策当局者や専門家たちに広く共有された認識である。そのことを、かつて外務省安全保障課において米軍基地問題を担当した筆者は、知っている。
問題は、米軍の姿勢ではなく、むしろ、既得権にあぐらをかく米軍の存在を日本政府が容認していることなのだ。鳩山元首相は、勇気を出して、沖縄の基地移転を米政府に要求したまではよかったが、遺憾ながら、米政府の圧力によって、挫折し、辞任に追い込まれてしまった。後続の菅政権は、まったくの腰砕けとなり、かつての自民党政権と同じく、「米政権の言いなり」の政権となっている。もし、民主党政府が沖縄住民の意向を背景にして、沖縄基地のグアムなどへの移転をあくまで真剣に求め、かつ日本のマスコミがこれを支持するならば、住民の意向を重視する米国オバマ政権としては、前向きに応じる可能性が高い、と筆者は考える。
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