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2011-02-25 00:00
(連載)米帝国の不可避的衰退と日本の持つ4つの選択肢(1)
吉田 重信
中国研究家
20世紀の世界を、政治、経済、軍事面で支配してきた米帝国が、衰退への道を歩む兆候が次第にあらわになりはじめている。最近の中東での民主化運動の高まりは、米国の対中東政策の破たんのはじまりを示しており、アジア・太平洋を含む全世界において、米国の勢力が一層の後退を余儀なくされるであろうと予測される。米国の経済は、予想できない苦境にあり、また、それにともない米国は、ここ数年来国防費を削減し続けている。したがって、米国は、数十年つづいた「世界の警察官」としての特権で、自国に都合のよい「世界の秩序と平和」を取り仕切るという「一極覇権主義」に代えて、多国間協調体制のもとに「地域の安定」をはかる政策に切り替えつつあるようだ。最近の、NATOにロシアを参画させるという動きにも、米国の意図を読み取ることができる。
今や世界情勢は、かつてのローマ帝国が盛りを過ぎたころのそれに類似しているようにさえみえる。オバマ大統領の出現と彼が就任後国民が期待したとおりの成果をあげることができないという困難な状況をみると、西暦2世紀末、ローマ帝国が、やはりアフリカ・リビア生まれのセプティミウス・セヴェルスを皇帝に据えた経緯を想起させる。多くの西洋史家によれば、セヴェルス皇帝は、疲弊し、混乱したローマ帝国体制の立て直しという期待をかけられて選出されたが、ローマ帝国体制の一時的立て直しには寄与したものの、結局は、帝国衰退の潮流を食い止めることはできなかった、と評価されている。
ローマ帝国の崩壊過程でローマ帝国は東西に二分され、世界は多極化の一途をたどった。西では、ゲルマン系諸国の勃興がみられ、東では、8世紀以降東ローマ帝国の衰退による空白を埋めるかたちで、イスラム勢力の台頭があった。ローマ帝国への対抗勢力として、近年、米帝国に挑戦するかのような中国の台頭と、イラクに続いてのイランをはじめとするイスラム勢力の再台頭という構図に置き換えてみれば、現在われわれが目撃しているのは、まさにローマ帝国末期と同じような、世界に君臨するかのような米帝国の衰退を示す現象であるようにみえる。これは、「文明の衝突」を説いたハンチントン教授がいちはやく予測したとおりである。
ただし、アジア太平洋情勢においては、米国は、中国の台頭や北朝鮮の悪あがきに対する警戒心から、日本や韓国などをはじめとするアジア諸国と連携を強化することによって、対応しようとする動きがみられる。しかし、これは一時的な対応であり、米国が最終的に描くのは、アジア太平洋地域における多国参加型の「平和と安定」の構図のようである。このような歴史の一大転換期において、60年余の長きにわたって、米国の従属国でありつづけた日本は、いかなる方向を目指すべきかが、民族と国家の存亡にかかわる最大の課題になろうとしている。選択肢はおよそ4通りある、と筆者は考える。(つづく)
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