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2011-03-05 00:00
(連載)ユースバルジと中東の抗議行動 (1)
水口 章
敬愛大学国際学部教授
現在のリビアにおける抗議活動にユースバルジ(人口構成に占める若者人口が突出して多い状態)が関係していると考えられることを、前回2月16-17日の本欄への投稿「チュニジア、エジプト政変のうねりの意味するもの」で提示した。では、チュニジア、エジプト、リビア以外の中東諸国においてはユースバルジは、認められるだろうか。国連の人口統計を基に2010年(推計、中位)の人口ピラミッドを作成してみた。
ユースバルジが顕著に確認できたチュニジア(ピークは20~24歳の層)、エジプト(ピークは25~29歳の層)、リビア(ピークは25~29歳の層)とほぼ同型となるのは、モロッコ(ピークは20~24歳の層)、アルジェリア(ピークは20~24歳の層)、シリア(ピークは20~24歳の層)、イラン(ピークは20~24歳の層)である。イランを除いたこれらのアラブ諸国は、2008年7月にフランスのサルコジ大統領の提唱で設立された地中海連合に関係している国々である(リビアはオブザーバーとして参加)。
そのモロッコ、アルジェリア、シリアの若者層にも、共通の言語であるアラビア語を通して、政変が起きている3国と共通の認識が広まっており、抗議活動も見られる。しかし、まだ政変に至るまでの大きな動きとはなっていない。それはなぜだろうか。モロッコの場合は、1992年9月に憲法が改正され、立憲君主制の元での統治が行われている。また、王家はイスラムの預言者ムハンマドの血を引く正統性のある家系であり、国家の象徴的な役割を果たしている。したがって、内閣退陣を求める声があっても、王制廃止要求までにはエスカレートしないと見られている。
アルジェリアの場合は、1991年12月の国民議会選挙でイスラム勢力(イスラム救国戦線FIS)が圧勝したことをきっかけに、長い内戦を経験している。そのため、体制側(軍関係者)も市民も慎重な行動をとっていると言えるだろう。シリアの場合は、シーア派の流れであるアラウィー派(約12%)が政治指導体制の中心となっており、人口の70%を占めるスンニー派の人々の中には不満を持つ人々がいる。このため、バアス党や治安関係機関が監視を強めている。(つづく)
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